金融

賃金引き上げ、コロナ禍では失業増加の副作用も (1/2ページ)

 中央最低賃金審議会の小委員会が14日、令和3年度の地域別最低賃金(最賃)を大幅に引き上げる目安を示した。新型コロナウイルス禍で傷ついた雇用環境の改善につながると期待されるが、人件費の上昇はコロナ禍で打撃を受けた企業を直撃し逆に失業や設備投資の抑制といった副作用も生む、もろ刃の剣となりかねない。生産性向上のため経営が行き詰まった「ゾンビ企業」を淘汰(とうた)する政権側の狙いも一部で指摘され、拙速に進めれば景気の持ち直しを後ずれさせかねない。

 政府は最賃引き上げについて、年度後半に日本経済をコロナ前水準に回復させるための「ブースター(後押し)」だと指摘する。菅義偉(すが・よしひで)首相は官房長官時代から年3%程度の大幅な引き上げを主導してきた経緯があり、国民の所得向上が消費回復に結び付き、経済を成長させるとの考えに立つ。

 コロナ禍は飲食や宿泊となどサービス業に従事する非正規労働者の職を奪い、所得を大幅に減少させた。低スキル労働者の就労環境改善に効果的な最賃引き上げは一般労働者との格差是正につながる。政府が対策を取ること自体は妥当だ。

 問題は、そのタイミングだ。大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「感染が拡大する中での最賃引き上げは、雇用回復を妨げる恐れがある」と指摘する。

 最賃は業種を問わず適用されるため、サービス業など人的労働に頼る業種や中小零細企業への影響が特に大きい。経営環境が改善する前に人件費の上昇が重なることで、従業員の一層の削減や、経営存続の断念につながりかねない。東京都に4回目の緊急事態宣言が発令されコロナ禍の出口が見えない日本経済にとって相当な“劇薬”といえる。

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