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パンや麺、再値上げは不可避 小麦価格19%引き上げで

 輸入小麦の10月からの政府売り渡し価格が、4月からに比べ19%と大幅に引き上げられることになった。今年に入り、原材料だけでなくエネルギー価格や輸送コストの上昇などもあり、加工食品は値上げが相次いでいる。パンや麺類など小麦を使った製品のさらなる値上げで、新型コロナウイルス感染症で傷ついた消費へさらなる悪影響が広がる事態が懸念される。

 小麦の売り渡し価格の引き上げについて、日清製粉グループの担当者は「今日発表されたばかりなので、価格改定は今後精査したい」と述べるにとどめた。

 同社は今年7月に小麦粉製品を2~4%値上げしたほか、9月にもそばやパスタなどの値上げに踏み切ったばかり。ただ、今回の19%という小麦価格の上昇を、企業努力だけで吸収するのは容易ではない。

 同社に限らず、ニップンや山崎製パンなど、今年に入って加工食品の値上げを実施した企業は多い。短期間に値上げが繰り返されれば、消費者を混乱させ、客離れにつながる可能性もあり、各社とも悩ましい状況となっている。

 平成20年4月に売り渡し価格が30%引き上げられた際はパン、パスタ、即席めんなどの小売価格が軒並み上昇しており、第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「内容量を減らす実質的な値上げも含めて、値上げは避けられないだろう」と話す。

 一方、農林水産省は、売り渡し価格の改定が消費者物価指数に与える影響は0・016%のプラスとなる試算を示した上で「家計全体の中で小麦が占める割合は限定的だ」とする。

 だが、永濱氏は天候不良の影響で大豆やトウモロコシなども価格が上昇しており、小麦を含めると食料品支出は年間4千円程度押し上げられると分析。「来年にかけてじわじわと家計の購買力を圧迫するだろう」と話している。(日野稚子、蕎麦谷里志)

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