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「高層階で炊く米はまずい」見栄と格差の“タワマン文学”が映す時代 (1/2ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 俺が買えるのは、タワマンといっても米を炊ける低層階だ――。タワーマンションの住人らの見栄と葛藤を描いた「タワマン文学」がTwitterの片隅で静かなブームを呼んでいる。中でも注目を集めているのが、価格も高い高層階の部屋では標高と沸点の関係で米を上手く炊けないという話題。自虐を装いつつ経済力を誇示する“マウンティング”のようにも読めるが、実際は住まいの「高さ」と米の炊きあがりに関係性はなく、フィクションと諧謔(かいぎゃく)も込めて時代を表現しているようだ。

カギは「98度で20分」

 「適切な炊飯は、98度以上で20分加熱する必要があります。標高300メートルで沸点が1度下がるので、標高600メートル以上の土地では徐々に影響が出てくるかと思います」

 炊飯器を製造販売する東芝ライフスタイルの広報担当者はこう話し、最上階でも標高200メートル程度のタワーマンションで、米の炊きあがりに影響するという説に否定的な考えを示した。

 調理前の生米に含まれているデンプンはベータデンプンと呼ばれる状態で、水とともに加熱すると糊化(アルファ化)という現象が起こり、粘り気があり消化しやすい「アルファデンプン」に変化する。水の沸点が低い環境で米を炊くと水温が上がりきらず、美味しく食べられる水準までアルファ化は起こらない。

 ネット上ではこうした理由をもとに「タワマンの高層階で米を美味しく炊けない」とする声もあるが、科学的な裏付けが十分とはいえないようだ。タワーマンションどころか日本で最も高いビル、あべのハルカス(大阪市・300メートル)や、東京タワー(東京都港区・333メートル)に相当する高さでも心配はないだろう。

 東京スカイツリー(墨田区・634メートル)の高さだと、東芝ライフスタイルが示した600メートルの基準を超えることになるが「高級タイプは圧力機能を搭載した炊飯器が主流で、圧力をかけることで沸点を上げられるので、標高による影響を抑えることができます」(同社広報)。いずれにせよ、タワーマンションの高さによって炊きあがりが大きく変化することはなさそうだ。

1000メートルなら味が変わる?

 仮に、世界一の超高層ビルとしてでギネス認定を受けた828メートルのブルジュ・ハリファ(アラブ首長国連邦・ドバイ)の高さで米を炊いたとしても同じことが言えるという。象印マホービンの広報担当者は、アルファ化の過程には98度の温度を20分維持することが前提だとして、こう説明する。

 「1気圧で炊飯した場合、標高1000メートルですと沸点が3.24度下がるため、圧力機能がない場合はアルファ化に必要な98度に達しない状態になります。裏返して説明しますと1000メートルを超える高さでない限り、お米の美味しさが大きく変わることはありません」

 現存するビルの高さによって沸点が低下することはあるが、米の炊きあがりが変わるほどの影響力は持たないということだ。標高が1100メートルを超える日本の町や村でも、上述したような環境に左右されない炊飯器があれば、やはり食卓に影響があるとは考えにくい。

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