モビリティー新時代

米EV、普及の懸念材料は脆弱な電力網 真価問われる「電流戦争」

 米新興EV(電気自動車)メーカーのリヴィアンが、最近EVピックアップトラックの「R1T」を出荷開始した。リヴィアンは、三菱自動車がイリノイ州ブルーミントンにある工場を閉鎖した後、買収して改修し、今回のEVピックアップトラックを生産している。筆者は、過去に何度もブルーミントン工場に出張した経験があり、新工場のビデオなどを見ると、とても感慨深い。

 さて、リヴィアンの実力は分からないが、EVの場合、信頼性や安全性を確保することが意外と難しい。初めてEVにチャレンジするベンチャー企業は時としてこれを見誤ってしまう。つまり、ガソリン車並みの信頼性や安全性を担保するのに膨大な時間を要するのである。米テスラでも最初はロータス・エリーゼを改修し、パワートレインのみを入れ替えて少量販売した。今回のリヴィアンでは、いきなり車両を開発して大量販売するため、品質問題など苦労があるのではないか。

 新興メーカー、テスラのほかにビッグ3もEVの発売を計画しているが、筆者が考える米国のEV普及に関する懸念は、EV車両拡大、充電インフラよりも、電力供給網の脆弱(ぜいじゃく)さにあると思っている。以前に米国でスマートグリッドのヒアリングのために、複数の電力会社を訪問した経験がある。米国の電力事業は、発電、送電、配電、小売などに分類されるが、米国では大小含めて3300以上の電力会社があるといわれている。かなり大手といっても、日本で考える以上に一つ一つの電力会社の規模は小さい。

 会社の規模が小さいがゆえに、許容できる電力のキャパシティーは少なく、例えば、ある州に多くのEVが急激に普及すると、電力逼迫(ひっぱく)、最悪ブラックアウト(全域停電)が起きるのではと考えてしまう。カリフォルニア州は、2020年1月より一定以上の規模を有する新築住宅への太陽光発電設置を義務化しているが、これらを想定してのことだろう。また、テスラが太陽光発電を有効活用するため、家庭用蓄電池を販売していることも、電力網が脆弱である米国事情の理にかなっていると思ってしまう。

 米国には約130年前、ジョージ・ウェスティングハウス、ニコラ・テスラ陣営とトーマス・エジソン陣営が電流方式をめぐって激しく争った「電流戦争」の歴史がある。ウェスティングハウスらが勝利して、現在の交流送電および発電所システムなどを構築した国であるが、EV普及拡大で多くの電力が必要となったとき、真価が問われるように思える。(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)

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