金融

日銀総裁「悪い円安ではない」 今年度物価・成長率見通し引き下げ

 日本銀行の黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は28日、金融政策決定会合後の記者会見で、一時1ドル=114円台まで円安が進んだ最近の為替相場について「“悪い円安”ではなく、日本経済にとってマイナスになることはない」との認識を示した。海外展開する企業の収益を押し上げる効果などが、輸入コストや家計負担増といった「マイナスの影響をかなり上回っている」と強調した。

 日銀は会合後に公表した先行きの景気予測を示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、令和3年度の消費者物価上昇率見通し(中央値)を7月時点の前年度比0・6%から0・0%に下方修正。原油高や円安の影響で輸入物価は上昇しているが、黒田氏は「日本企業はコスト上昇分をマージン(利幅)の圧縮で吸収し、販売価格を可能な限り据え置こうとする」と説明し、デフレ期に定着した商慣行が値上げを阻んでいると指摘した。

 ただ、日本が欧米のような急速なインフレに見舞われるリスクは「極めて限定的」と分析し、「徐々に物価が上昇していく」と予測。物価上昇率見通しは4年度が0・9%、5年度が1・0%と据え置いた。

 また、展望リポートでは半導体不足や物流停滞の影響を受け、3年度の実質国内総生産(GDP)成長率見通しも、3・4%(7月時点3・8%)に引き下げた。黒田氏は半導体などの供給制約について、「影響が拡大、長期化するリスクに留意が必要だ」とした。

 一方、今後はこうした影響が緩和され新型コロナウイルスのワクチン普及も進むとみて、4年度の成長率見通しは2・9%(同2・7%)に引き上げ。5年度は1・3%に据え置いた。

 今後の景気や物価上昇の期待を踏まえ、黒田氏は「今の状態で金融緩和を続けることはマイナスよりもプラスが大きい」と述べ、大規模な金融緩和政策を維持する考えを強調した。

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