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「山梨モデル」今度はディナーショー、忘・新年会など宴会開催可能目指す

 新型コロナウイルスの新規感染者数が急減し、全国的に飲食店の時短営業要請解除が進んでいる。9月中旬から通常営業が可能な山梨県は、ワクチン接種証明書の活用などで人数制限のない宴会開催に向けた実証実験を始めた。成果を確認できれば12月にも宴会再開となる。ホテルなどでは昨シーズンは見送った忘新年会やディナーショー開催への期待も高まっており、感染対策と経済の両立で先行する山梨県の新たな試みに注目が集まる。

 スマホの写真でも確認

 「ワクチン接種の証明書と身分証明書をご提示ください」

 10月下旬、山梨県富士吉田市の高級ホテル「ホテル鐘山苑」の宴会場の前に設置された受付で、ホテルの担当者が出席者に声をかけていた。一人一人からワクチン接種証明書そのものやスマートフォンで撮影した証明書、運転免許証などの提示を受け、確認していった。人数制限のない宴会を可能とする、県の「やまなしグリーンパス」実証実験だ。

 この日の会合は約40人。主催者が事前に、実証実験に対応しての開催であることを参加者に呼びかけていたこともあり、担当者2人の確認作業でも、混雑やトラブルはなくスムーズに会合、宴会が始まった。

 主催者は「これまでは宴会形式の集まりはできず、会合で話し合いはしても食事はなく、お弁当を持って帰るスタイルも多かった。実際に顔を突き合わせての雑談を交えた情報交換は有意義だ」と話す。ほかの参加者も「このやり方ならお酒が出る夜の宴会も大丈夫だ」と期待を寄せる。

 実証実験は2段階

 山梨県ではこれまで、利用者の連絡先記録やアクリル板によるパーティションなど飛沫対策を施し、これが認証された飲食店などではほぼ通常営業が可能となる「グリーン・ゾーン認証制度」を展開。しかし、人数については最大4人程度としている店舗が多く、忘・新年会などの多人数が参加する宴会の開催には至っていなかった。

 今回取り組むグリーンパスは、ワクチンの2回接種や抗原検査での陰性など証明書を示すことで、個室ならば通常の宴会開催を可能とする実証実験だ。10月末までの第1弾は県内4カ所で、人数制限なしの宴会を実施、運用面の状況を確認。約2週間空け、第1弾の実証実験を実施し、今日11月18日から、アクリル板不要、大皿料理可能など、ほぼ制限なしの宴会実験第2弾に移る。

 これで問題なければ、ワクチン証明書を活用することで県内の宴会開催を認める予定で、忘年会シーズンに間に合わせる。

 OKなら営業展開

 県内のホテルに聞くと「感染状況を気にしているため、企業などの忘年会、新年会の予約はまだ様子見のまま」だ。だが、実証実験で宴会開催に「ゴーサイン」や一定の方向性が出れば、「一気に営業をかけて、宴会の再開につなげたい」と話す。

 ホテル鐘山苑の池谷辰徳取締役は「これまでは団体宿泊があっても、宴会はできませんと伝えなくてはならず、心苦しかった。実験参加によって、宴会ができるようになったことで予約は増えている」と話す。そのうえで「例年なら春先に決まるディナーショーが、どこのホテルでも決まっていない。可能になったらすぐ交渉を始め、この年末のディナーショー開催にこぎつけたい」と期待を膨らませる。

 山梨県の主要産業の1つである観光分野は、新型コロナの影響で回復が遅れている。特にホテルや旅館の集客を増やすことが、業績回復の鍵となる。ワクチン接種済証明書活用の宴会なら感染リスクは極めて小さくできると県が“お墨付き”を出すことで、観光客誘引につなげる狙いだ。(平尾孝)

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