円安副作用 値上げの春 小麦、食用油…家計圧迫の恐れ

2013.3.15 08:30

 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に伴う急激な円安の副作用で、輸入品を中心に値上げの動きが広まっている。

 価格上昇は、海外ブランドなどの高額品だけでなく、小麦や食用油といった食料品など生活必需品にも影響が及び始めている。値上げの背景には、世界的な金融緩和に伴う穀物相場の上昇なども影響しているが、資源価格の上昇がエスカレートすれば、企業経営や家計を圧迫する恐れがある。

 「このままでは、価格への転嫁も考えなくては」。14日、食パンの新製品を発表した敷島製パン(名古屋市)の根本力執行役員は、原料となる小麦粉の値上げについて触れ、価格転嫁という厳しい経営判断を迫られる可能性を示唆した。

 農林水産省は4月から、製粉会社などに販売する輸入小麦の政府売り渡し価格を平均9.7%引き上げると発表。パンや麺類などのメーカーにも痛手で、「値上がりが続けば(企業努力で)吸収できない」(根本氏)事態を招く可能性は強い。

 同じく、相場高とのダブルパンチを受けるのが食用油。日清オイリオグループは4月1日出荷分から、代表的な食用油を10%程度引き上げる。上げ幅は家庭用が1キロ当たり30円以上、業務用が1斗缶(16.5キロ)当たり500円以上。水産品では、はごろもフーズが「シーチキン」ブランドの缶詰16品目の価格を5月1日から、2.2~6.1%引き上げる。特売の常連品の値上げで、大手スーパーの担当者は「他メーカーを増やすことも検討する」と話す。

 株高で好調の高額品にも影響が出る。高級ブランドの「ルイ・ヴィトン ジャパン」は2月15日、バッグなどの一部商品で平均約12%値上げ。ティファニーも4月10日からジュエリー類などで平均10%程度の値上げに踏み切る。

 住宅関連でも、海外から仕入れる建設資材などが高騰する。ただ、そのコスト上昇分を“値上げ”で反映するかどうかは「消費者は価格には敏感なので厳しいところもある」(福田秋生・不動産経済研究所取締役企画調査部長)という。

 円高では好調だった海外旅行にも影響が出そうだ。中堅旅行会社の楽天トラベルによると、2カ月前に比べ、一部でホテル宿泊費が上昇。別の中堅旅行会社の営業担当者は「(原油価格に連動して高止まりする)燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)とともに注視していかないといけない」と気をもむ。

 円相場は衆院が解散した昨年11月16日の1ドル=81円11~13銭から、今月14日には96円19~20銭まで18.6%の下落。日銀によると、輸入物価は昨年10月まで6カ月連続で前年割れが進んでいたが、同年11月以降はプラスに転じ、今年2月は13.2%増と2桁の上昇となった。

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