パナソニックとシャープ「雌伏の一年」 リストラでV字回復なるか

2013.12.31 06:00

【回顧 関西経済2013(3)】

 関西の電機各社にとって巨額赤字からの脱却を目指し、将来への布石を打った「雌伏の一年」となった。パナソニックは、プラズマテレビや個人向けスマートフォン(高機能携帯電話)など不採算事業からの撤退を表明するとともに、成長分野と位置づける自動車や住宅関連事業を強化した。経営再建中のシャープは、公募増資や国内外の企業からの出資を受け入れるなど資本増強を進めた。

 パナソニックの業績不振の原因とされるプラズマテレビ事業への巨額投資。かつては大画面テレビはプラズマ、中小型テレビは液晶とすみ分けてきたが、技術革新で液晶テレビが大画面でもプラズマと画質で遜色なくなり、コスト競争力でプラズマが後塵を拝した。

 ところが液晶が優勢となっていた平成19年にプラズマテレビ向けパネルの生産拠点の尼崎工場(兵庫県尼崎市)で新棟建設に着手したことが裏目に出た。約4千億円の過剰投資となり、赤字が膨らんだ。24年度からは液晶に経営資源を集中し、プラズマは電子黒板などに用途を絞って需要拡大を目指したが、販売は目標の半分以下にとどまり、10月に撤退を表明した。

 また、パナソニックは、「ガラケー(ガラパゴス携帯)」と呼ばれる従来型携帯電話では国内トップ級だったが、スマホで大きく出遅れた。唯一の供給先だったNTTドコモが夏商戦モデルでソニーと韓国サムスン電子のスマホを大幅に安くする「ツートップ」も追い打ちをかけ、9月に個人向けスマホからの撤退を表明した。

 一方、自己資本比率が低迷するシャープは財務基盤の強化が課題だった。このため、米通信技術大手クアルコムや韓国サムスン電子に続き、住宅設備最大手のLIXIL(リクシル)など国内3社からの出資も受けた。

 さらに公募増資で1千億円超を調達し、自己資本比率は9月末の6・4%から約12%へと回復した。また、首都圏の主要物流拠点2カ所の売却なども進めた。

 こうした布石に加え、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安効果もあり、関西電機業界に薄日は差してきている。

 平成25年4~9月期連結決算で、パナソニックは中間期としては過去最高の最終利益を計上。シャープも本業のもうけを示す営業利益で黒字化を達成した。パナソニックの津賀一宏社長は「進んでいる方向に間違いないということが見えてきた」と語る。

 実際、両社は成長戦略に転換しつつある。パナソニックは平成27年度入社の新卒採用人数を前年度比2倍増にすることを発表した。増加分を自動車や住宅関連事業に集中配置する計画。シャープも、利益率の高い液晶パネル「IGZO(イグゾー)」の外販や技術供与を強化しており、来年は反転攻勢でV字回復できるか真価を問われる。(藤原直樹、織田淳嗣) 

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