2014.2.20 05:00
■困った持ち主救うポータル展開
東京五輪招致活動の最終プレゼンテーションの時、滝川クリステルさんは「東京で物を無くしても、ほぼ確実に戻ってくる」と治安性をアピールした。落し物ドットコムの事業モデルは、こうした世界に誇れる文化に基づいたもの。「落し物ドットコム」というポータルサイトを通じた情報共有などを通じ、より効率的な形で持ち主に戻るシステムを構築している。増木大己社長は「120万人程度が実際に活用するサイトへと育てていきたい」と語る。
--起業のきっかけは
「私自身、海外で携帯電話を紛失するなど、落とし物で大変な思いをした経験があり、日本自動車連盟(JAF)のロードサービスみたいなものがあればと常々思っていた。ある会合で事業構想を公表したところ、サムライインキュベートの榊原健太郎代表取締役に評価してもらい、面談を繰り返して起業に至った」
--サイトの特長は
「落とし主はどこで紛失したのか分からず、警察に行ったり心当たりのある店に電話をかけたりして探し回る。このためサイトでは、『ソーシャルの力で落とし物を持ち主の手に』をコンセプトとして掲げている。例えば東京駅周辺で物を落とした場合、『こういった財布を落としました。どなたか見かけた方はいらっしゃいませんか』といった形で情報を登録。拾得した人が直接連絡を入れるケースもあるし、各種情報をシェアできるため、持ち主は探しやすくなるというメリットが生じる。見つかった場合、お礼を直接本人に伝えるのは難しいが、サイトを活用すればメッセージを残すことができる」
--サイトの利用目標は
「傘や手袋の片方といった小さいものまで含めると、警察に届けられる落とし物の数は年間で2000万件に上る。これに対して遺失届は1200万件。つまり1200万人が落とし物を探そうとしている。このうちの10%程度が見てくれるサイトにしたい」
--収益はどういった形で計上しているのか
「主な収益源が法人向けのサービス『リターンタグ』だ。スマートフォン(高機能携帯電話)などにシールを貼り付けた自転車の防犯登録みたいなもので、拾得者からの連絡をフリーダイヤルで24時間・365日にわたって受け付け、衛星利用測位システム(GPS)で拾得場所を確認。プライバシーを守って落とし物の回収とお礼を代行する」
--今後の重点戦略は
「仕事の関係で重要な情報が入った端末を持ち出すケースが増え、一段と高度なセキュリティー対策が求められている。法人需要が伸びる余地は大きい。このためシンガポールの企業と提携し、財布やカバンなどに入れるカード型の落とし物追跡タグの取り扱いを開始した。また、タクシー会社などと連携し、落とし物の検索システムの実用化も進める」(伊藤俊祐)
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【プロフィル】増木大己
ますき・だいき 慶大商卒。SBI証券で法人営業、IPO支援業務を担当。2012年7月落し物ドットコムを設立し現職。26歳。広島県出身。
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【会社概要】落し物ドットコム
▽本社=東京都台東区東上野3-12-1 井合ビル4階
▽資本金=550万円
▽設立=2012年7月
▽事業内容=落とし物総合情報ポータルサイトの運営