2014.4.22 06:58
日立製作所は21日、分速1200メートルという世界最高速のエレベーターを開発し、中国・広州市に2016年に完成する超高層ビル「広州周大福金融中心」(高さ530メートル)に導入すると発表した。21人乗りのエレベーターは、ビルの95階までの440メートルを約43秒で昇るという。エレベーター“最速”の覇権争いは、三菱電機、東芝を交えた三つどもえの戦いの様相を呈してきた。
日立は世界最高速を実現するため、大出力と薄型化を実現した永久磁石モーターを新たに開発。エレベーターのかごを引き揚げるのに必要なロープは従来比30%強度を高めながら、重量を30%軽量化することで巻き上げ機の負荷を大幅に軽減した。
一方で、超高速走行中に異常があった場合に安全に停止できるよう、300度を超える発熱にも耐える制動材を採用したブレーキ装置を開発するなど、安全性も高めた。振動を抑えて快適性を高める技術も盛り込んだ。
日立は、広州の新ビルに、今回の分速1200メートルのエレベーター2台をはじめ、低層用も含め合計95台を納入する。
中国は、エレベーターの新規受注が13年度に45万台に達し、世界の約6割を占める一大市場。このため、「(今回の記録達成は)日立の存在感を示す絶好のチャンス」(日立製作所都市開発システム社の池村敏郎社長)ととらえる。
電機メーカー各社はこれまで、エレベーターの高速化の記録を塗り替えようと、技術開発を重ねてきた。これまでのエレベーターの最高速度は、三菱電機が開発し、今年の年末に完成する中国・上海タワーに設置される予定の分速1080メートルだったが、日立はこれを上回った。
最高速を更新することは、「技術力を示せるだけでなく、企業ブランドの認知度向上にもつながる」(日立製作所都市開発システム社)だけに、速度競争は一層熱を帯びそうだ。
■世界最速エレベーター記録更新の経緯
稼働年 企業名 施設名(高さ) 分速
1993年 三菱電機 横浜ランドマークタワー(296メートル) 750メートル
2004年 東芝エレベータ 台北国際金融センター(508メートル) 1010メートル
(台北101)
14年 三菱電機 上海タワー(632メートル) 1080メートル
16年 日立製作所 広州周大福金融中心(530メートル) 1200メートル