世界が熱狂「eスポーツ」 PCゲーム市場拡大、日本企業も注目

2014.6.12 08:15

 対戦型ゲームを競技化した「eスポーツ」が世界的に盛り上がっている。パソコン(PC)オンラインゲームが中心で、欧米などではプロリーグがあり、トッププロは年1億円以上稼ぎ出す。大規模な大会には数万人の観客が押し寄せ、テレビやネットで数千万人が視聴する過熱ぶりだ。テレビゲームで長く世界市場をリードしてきた日本だが、この分野では大きく出遅れた。だが、今年になって秋葉原に専用施設がオープン。市場拡大の兆しも出ている。

 「ウォーッ」。選手がステージに登場すると、会場には割れんばかりの歓声があがった。“試合”が始まるとそのトーンはさらに高まる。プロスポーツの試合やコンサートではなく、2013年10月に米ロサンゼルスで開かれた人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンズ(LOL)世界選手権」の光景だ。

 同大会の賞金総額は500万ドル(約5億円)で、テレビ中継とオンライン配信を合わせた視聴者は3200万人に達した。

 世界で最もプレーヤーが多いPCオンラインゲームとされ、eスポーツ市場の牽引(けんいん)役となっているLOLは、中国テンセント傘下の米ライオットゲームズが運営。複数のプレーヤーがキャラクターを選んで対戦するゲームだ。米政府がLOL選手にプロスポーツ選手用のビザを発給するなど、スポーツとして公式に認知されている。

 大会賞金総額25億円

 米エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム「FIFAシリーズ」は、国際サッカー連盟(FIFA)が公認。大会優勝者は、サッカーの年間最優秀選手に贈られるバロンドール式典に招待され、選手とともに表彰される栄誉が与えられる。

 米調査会社スーパーデータによると、13年のeスポーツ大会の賞金総額は2500万ドル(約25億円)以上で、視聴者は7150万人を超えた。14年には世界のPCオンラインゲーム市場の規模が、ゲーム機専用市場を超えるとも予想され、eスポーツがますます広がることは確実。チャンスとばかりに支援に乗り出す日本企業も相次ぐ。

 ■日本でも浸透の兆し、専用施設で大会

 ディスプレーメーカーのEIZOはスウェーデンのeスポーツのプロチームと提携して、ゲームプレーヤー向けの高性能液晶ディスプレーを共同開発した。大塚製薬も韓国法人がプロチームのスポンサーとなっている。東芝はドイツ法人が、スウェーデンのプロチームとパートナー契約を結んでいた。いずれも一般のプロスポーツの支援と同様に、自社製品の世界市場での知名度向上が目的だ。

 日本でもeスポーツ普及に向け動きが出てきた。1月にオープンした東京・秋葉原のeスポーツ専用施設のeスポーツスクエア秋葉原には、パソコンメーカーのマウスコンピューター(東京都千代田区)が、自社の機材を無償で貸与。小規模ながら国内大会を開催している。東京メトロポリタンテレビジョンは4月から、eスポーツ情報の番組「eスポーツMaX」のレギュラー放送を始めた。

 楽しみ方多様化

 日本人の世界的プレーヤーも出ている。第一人者は梅原大吾さん(33)。複数の関係者によると「スポンサー収入を合わせ、少なくとも年2000万円超の収入があるのではないか」という。

 日本のゲーム市場は、専用機市場をリードした任天堂が失速する中、「パズル&ドラゴンズ」に代表されるスマートフォン向けゲームが台頭した。海外と異なり、PCオンラインゲーム市場は伸び悩んでいる。一方で、海外ではPC市場が着実に拡大し、スマホやタブレットにも波及する構図。ソニーが、7月からクラウド型オンラインゲームも開始する予定など、ゲームの楽しみ方はさらに多様化する見通しだ。

 eスポーツが日本でどこまで定着するかは未知数だが、「大規模な大会が開かれたり、大金を稼ぐ猛者が次々現れれば、一気に拡大する」(関係者)可能性もある。(佐竹一秀)

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