スズキとVWの提携解消裁判いよいよ大詰め 年内にも裁定

2014.7.27 12:00

 スズキと独フォルクスワーゲン(VW)の資本・業務提携解消をめぐる係争が大詰めを迎えている。VWが所有するスズキ株の扱いについて、ロンドンの国際仲裁裁判所が年内に裁定を下すとの見方が強まっているためだ。スズキが自社株を取り戻せれば“離婚”が成立するが、認められなければ逆にVWがスズキを支配下に置くために敵対的買収に動く可能性がある。

 「夏季休暇が明ける9、10月には大きな動きがあるのではないか」。自動車大手幹部はそう予想する。

 VWは3月に発表した2013年の決算報告で年内に仲裁結果が出るとの見通しを示した。スズキは交渉経過は明かせないとする一方、鈴木修会長兼社長も今年に入り「何らかの形で早く終結したい」と話している。

 スズキとVWは09年12月に環境技術や小型車開発で提携。VWがスズキの発行済み株式の19・9%を取得し、筆頭株主となった。

 だが、スズキはVWから思うように技術供与を受けられないと不満を募らせ、一方VWはスズキが伊フィアット(現・フィアット・クライスラー・オートモービルズ)からディーゼルエンジンの調達を決めたことを契約違反と指摘した。両社の関係はこじれ、スズキは提携をやめて自社株を買い取ると通告。VWはこれに応じず、国際仲裁裁判所に裁定が委ねられた。

 業界に詳しいナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表は「スズキは対等な関係でVWの技術を得られると期待したが、VWはスズキを徐々に支配して世界戦略に組み込みたかった」と思惑のズレを指摘する。

 今後、和解が成立しなければ仲裁裁判所から法的拘束力のある裁定が下される。想定されるのは(1)スズキの主張通り自社株買い戻しを認める(2)両社に非があるとして、価格を上乗せするなどスズキにペナルティーを科した上で買い戻しを認める(3)VWのスズキ株保有継続を認める-の3案。

 交渉経過が不透明なため結果を見通すのは難しいが、「双方とも言い分が決定力に欠ける。痛み分けになるのでは」(自動車大手幹部)との指摘もある。

 一方、VWの言い分が認められた場合、スズキは敵対的買収の危機にさらされる。VWが13・1%以上の株式を買い増せば持ち株比率が3分の1超となり、重要議案を否決できる拒否権を握るからだ。

 スズキは友好的な買収元「ホワイトナイト(白馬の騎士)」を探すなど防衛策を講じる必要が出てくるが、中西氏は有望なホワイトナイト候補としてトヨタ自動車とフィアットを挙げる。トヨタは昭和50年代にスズキが排ガス規制への対応に遅れた際、エンジンを供給して窮地を救った過去がある。フィアットはセルジオ・マルキオーネCEO(最高経営責任者)がスズキとの提携拡大に意欲的だ。

 ただ、自動車大手の上位グループが世界販売1千万台超を目指す規模の競争に入る中、どこに助けを求めてものみ込まれずに独立を維持できるかは、予断を許さない。(田辺裕晶)

閉じる