トヨタ、「ミライ」生産能力を3倍増強 受注4割はクルマ好きの個人客

2014.12.16 06:36

 トヨタ自動車は15日、世界初の一般向け燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を発売した。水素を燃料に走行中に水しか出さない「究極のエコカー」として注目が集まるが、年間生産台数が700台と限られるため初日はイベントなどを行わず、静かな走り出しとなった。顧客からの引き合いが強いため2015年末までに現在の3倍程度まで生産能力を増強し、本格的な普及につなげる。

 ミライはこの日、愛知県豊田市の元町工場から1台目の完成車が出荷された。工場内の専用ラインで1日数台のペースで組み立てられる。

 東京トヨペットでは、予約受け付けを開始した11月10日以降、同社だけで120台受注した。官公庁や環境問題に関心が強い企業からの注文が多いが、4割は自動車好きの個人客だった。

 国内の年間販売目標400台に対し、全国からの受注はすでに1000台規模に上っているもようで、納期は1年以上かかる見通しだ。東京トヨペットでも受注の際、「納期はお伝えできないと話している」(幹部)という。

 購入者にとっては、無事新車が届いても、問題になるのが燃料の水素を補給する水素ステーションの整備不足だ。一般客が利用できる商用ステーションはまだ全国に2カ所しかなく、今年度内に開設されるのも20カ所程度にとどまる。

 政府は1カ所で4億~5億円かかるステーションの設置費用を最大2億8000万円補助して整備を後押ししており、15年度内に100カ所の整備が見込まれている。

 トヨタは当面、東京、大阪などステーションの整備が優先的に進む4大都市圏でミライを販売する方針だ。

 ミライは4人乗りのセダンタイプで、価格は723万6000円。国の補助金を利用すれば購入者の実質的な費用負担は520万円程度になる。

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