教員から情報収集しデジタル教材の質向上 チエル・川居睦社長

2016.5.31 05:00

 教員による一方的な授業ではなく、学生・生徒が能動的に学ぶ「アクティブラーニング」のニーズが高まり、一人一人の能力や特性に応じた個別学習や、子供たち同士が教え合い、学び合う協働学習にタブレット端末が活用され始めている。文部科学省も「教育の情報化ビジョン」で「2020年までにすべての学校で1人1台のタブレット導入」を掲げ、市場は大きく動く。授業支援システムとデジタル教材を開発するチエルの川居睦社長は「製品の改善を重ね、市場拡大ペース以上の成長を図る」と事業拡大を目指す。

 --学校教育市場に特化してビジネスを展開している

 「授業支援システムとデジタル教材を提供している。高校・大学向けと小学校・中学校向けでは、全体の受注に占める割合はそれぞれ72%と23%だ。パソコン教室や語学教室のほか、教員と学生・生徒との双方向授業などのシステムを供給している。授業の効率を高めるデジタル教材はクラウドで提供し、高校・大学向けの会員数は260万人を超える。教員からの情報収集に注力することで、ニーズに対応した製品の企画開発を進めている。ノウハウ、技術力を蓄積してきたことで教育現場からの信頼は厚く、一度採用されると長期にわたって購入を続けてもらえるため、経営の安定化に寄与している」

 --特徴と強みは

 「多くの導入実績があり、現場の教員との連携を密にしてきたことから、常に品質向上が図られ、教授法も進化させている。学校現場では1人の教員が数十人の学生・生徒に対するため、特有の使い方に対応できなければならない。ほぼ瞬時に一斉回答したり、配布する必要がある。動画や音声が途切れたり、滞ってもいけない。教員が使いやすいよう、授業に合わせた教材をピックアップする機能など、高い技術力で付加価値の高い製品を提供している」

 --現場の教員との関係づくりは

 「教育現場でITを活用するための情報誌とホームページで、導入事例を公開している。セミナーも開催して製品の活用方法を紹介するだけでなく、教育現場の現状についても情報発信する。一部の大学には担当を常駐させて、教員や学生をサポートしている」

 --今後の展開について

 「将来デジタル端末は1人1台普及すると予想され、今後も市場は拡大すると見込んでいる。市場ニーズを満たす新製品を継続的に投入できるようにするとともに、既存製品の改良にも積極的に取り組んでいく。全国の営業拠点は7カ所だが、空白地域へ進出するとともに、販売代理店との連携を強化して受注増を図る方針だ。海外22カ国に輸出もしているが、売上高に占める割合は数%にすぎない。しかし、将来は本格的にグローバル展開したい」(佐竹一秀)

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【プロフィル】川居睦

 かわい・むつみ 中央大経卒。1986年、タカギエレクトロニクス入社。アルプスシステムインテグレーションを経て、99年、旺文社デジタルインスティテュート(現・チエル)取締役。2006年10月から現職。53歳。大阪府出身。

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【会社概要】チエル

 ▽本社=東京都品川区東品川2-2-24 天王洲セントラルタワー3階

 ▽設立=1997年10月

 ▽資本金=3億円

 ▽従業員=76人(他臨時従業員16人含む、2016年3月末時点)

 ▽売上高=18億円(17年3月期予想)

 ▽事業内容=学校教育IT事業

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