「東京撤退の直前に見つかった秘伝のレシピ」 串カツ田中の貫啓二社長が明かす開店秘話

2016.10.25 06:32

 「串カツ田中」は大阪のB級グルメとして知られる“串カツ”を全国展開している。

 常連でなければ入りづらい大阪下町の老舗とは対照的に、明るく、活気ある店舗づくりで家族連れなど老若男女が訪れている。9月には東証マザーズにも上場を果たした。貫啓二社長は「串カツをすし、ラーメン、天ぷらと並ぶ日本を代表する食文化に育てる」と意気込んでいる。

 --大阪の大衆食というイメージが強い串カツを東京を中心に全国展開している

 「もともと大阪の飲食店運営から始まり、東京に進出して高級京料理の人気店をつくり上げた。しかし2008年のリーマン・ショックの後、一気に客足が遠のいた。経営が傾き倒産を覚悟したほどだ。苦し紛れの中、最後の望みをかけて低予算業態として、その年の12月に東京・世田谷の住宅街に串カツ店を開店した。三等立地といわれる条件の物件だったが、近隣住民から支持され人気店となった」

 --なぜ串カツなのか

 「当社副社長の田中洋江が、かつて父親が自宅で作ってくれた串カツで店舗展開したいという事業計画を持っていた。しかしどうしてもその味が再現できず、断念して高級京料理店を出店した。その後、リーマン・ショックの影響で東京撤退の準備をしていたときに、田中の父親が残したレシピが偶然見つかり、ようやく再現できた。さっぱりして飽きの来ない、何度でも食べたくなる自信作だ」

 --幅広い客層を引きつけている

 「店舗の立地は住宅街、ビジネス街、ロードサイドなど場所を選ばない。串カツは常に30種類以上をそろえ、1本100~200円で、100円と120円が大半を占めている。平均客単価は2400円なので気軽に訪れることができる。来店客に楽しんでもらえる趣向も凝らしている。サイコロを振った目によって、無料、割り引きでハイボールを飲める『チンチロリンハイボール』。他に『子供じゃんけんドリンク』は子供の客がじゃんけんで勝てばソフトドリンクが無料になる。このため家族連れがファミリーレストランのような感覚で訪れている」

 --店舗を急拡大している

 「直営とフランチャイズチェーン(FC)で展開している。店舗の装飾がシンプルで、初期投資が抑えられる。すべてマニュアル化されているので、低コスト運営が可能だ。メニューも四半期ごとに、ハモやぎんなんなど季節モノを入れ替え、飽きられないよう工夫している。14年には串カツの本場大阪にも逆上陸し、繁盛店となっている」

 --今後の成長戦略は

 「飲食チェーン業界を見ていると、牛丼、焼き鳥、カレーなど、魅力的な単品メニューを提供している業態が強い。これからも看板メニューである串カツを進化させていく。全国129店のうち東京が85%を占めるが、毎年30~40店ずつ開店して、全国に店舗を構えたい」

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【プロフィル】貫啓二

 ぬき・けいじ 大阪府立島本高卒。1989年、トヨタ輸送入社。98年11月個人事業として飲食業を創業。2002年3月ケージーグラッシーズ(現・串カツ田中)を設立し、現職。45歳。大阪府出身。

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【会社概要】串カツ田中

 ▽本社=東京都品川区東五反田1-7-6 藤和東五反田ビル5階

 ▽設立=2002年3月

 ▽資本金=4億6850万円

 ▽従業員=118人(16年9月末時点)

 ▽売上高=40億5800万円(16年11月期予想)

 ▽事業内容=飲食店の経営、FC開発、プロデュース

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