イートイン拡大、外食を侵食 コンビニ積極展開、飲食需要掘り起こし

2016.12.3 06:45

 コンビニエンスストアが店内で飲食できるイートインを設置した店舗を拡大している。これまでのコンビニは商品を売って終わりだったが、入れたての100円コーヒーや軽食を店内で飲食できるようにすることで新たな需要を開拓しようとしている。コーヒーショップやファストフード店などが顧客を奪われるケースも出ており、大手コンビニ各社によるイートイン拡大が外食業界にとって大きな脅威になる可能性もある。

高齢者や女性客増加

 「清掃負荷が重く、深夜のたまり場になりやすいため、以前はイートインの設置に積極的ではなかった」

 こう語るのはファミリーマートの幹部だ。

 それが一転して設置店舗を拡大している。2017年度末までに全国約1万8000店舗の3分の1に当たる約6000店舗にイートインを設置する方針だ。都心では2階がイートインの店舗を増やしており、ビジネスマンが商談で使い、女性客が1人でコーヒーを飲むケースが目立つ。地方や郊外の店舗では高齢者や主婦が集まる地域コミュニティーの場ともなっている。今春には吉本興業と組み、イートインで寄席や漫才を行う取り組みも始めた。イートインの効果についてファミマは「集客率が上がり、飲食需要を掘り起こせている」(広報)と話す。

 効果を高めるため、店内の品ぞろえも強化している。11月にはカップコーヒーと焼き菓子の新シリーズの展開も始めた。商品本部加工食品・菓子グループの小松正人マネジャーは「コーヒーの種類を充実させ、外食の顧客を取りたい」と意気込む。

 全国の約1万9000店舗のうち、約2000店舗にイートインを設置するセブン-イレブンも「今までアプローチできなかった高齢者や女性の利用が増えている」(広報)という。今後は新規出店や改装時にスペースが広い店舗には積極的に設置する。ローソンも同様のスタンスだ。

 全店舗にイートインと調理場を設置するミニストップは新しい業態の店舗展開を本格化させている。新店舗の「シスカ」は食材にこだわり、品ぞろえが豊富で、夜は「ちょい飲み」もできる。まだ都心に7店舗しかないが、さらに増やす。

顧客基盤に地殻変動

 一方、コンビニ各社のイートイン拡大のあおりを受けているのが外食業界だ。

 都内にあるコーヒーショップのドトールコーヒーの店長は「100円コーヒーやイートインの展開で顧客を奪われ、売り上げが減っている店舗もある」と明かす。また、マクドナルドやミスタードーナツも一部店舗で顧客を奪われていると認めている。

 ただ、ドトールコーヒーの広報によれば、影響はコンビニに隣接する一部の店舗に限られ、マクドナルドやミスタードーナツも「業績への影響はない」としている。

 もっとも、イートインの拡大に力を入れるファミマの戦略が奏功し、売り上げ増につながれば、セブン-イレブンやローソンも対抗して設置拡大に本腰を入れるとみられる。最近ではスーパーや百貨店も相次いで設置しており、各社のイートイン攻勢は、外食市場の顧客基盤に地殻変動をもたらす可能性がある。

 コンビニやスーパーからの侵食に対し、外食業界は品質が高く、特長ある商品で差別化を図れるのか。イートイン拡大の潮流が新たな競争を呼びそうだ。(黄金崎元)

 ■コンビニ各社のイートインの設置状況

 (全店舗数/設置店舗数)

 ・セブン-イレブン

  1万9166(11月末現在)/約2000

 ・ファミリーマート・サークルKサンクス

  1万8211(10月末現在)/約4000

 ・ローソン

  1万2395(2月末現在)/非公表

 ・ミニストップ

  2242(10月末現在)/全店舗

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