【生かせ!知財ビジネス】重要なデータストリーム特許

2016.12.9 05:00

 □PatentIsland・久野敦司社長

 第4次産業革命の時代、知財戦略や知財部員の在り方はどう変わるのか。IoT(モノのインターネット化)戦略立案支援などを行うPatentIsland(京都府亀岡市)の久野敦司社長に聞いた。オムロン在籍時にIoT戦略の中核技術を発明し、知財部門で長年活躍した腕利きの知財戦略家だ。

 --企業の知財部門の在り方を問う声が上がっている

 「逆だ。IoT時代は知財部門の地位を、縁の下の力持ちから表舞台の主役へ変える可能性がある。従来の工業社会は労働や資本(工場など)が経営の中心にあったが、IoT時代はロボット、AI(人工知能)、3Dプリンターなどによって労働と資本はコモディティー化(個々の優位性や特質が失われること)し、中心は知識情報とその利用を制御する知財権の競争へと変わるからだ」

 --具体的には、どういうことか

 「IoT時代では、工場はネットワークとサーバーなどから成るサイバー空間の下部構造となる。無数のセンサーで検知されたデータはサイバー空間に吸い上げられて知識情報へと加工され、工場のサーバーに送られて装置を動かすアプリケーションソフトへと供給される。重要なのは、データの提供元と利用先をマッチングさせる仕組みだ。例えばオムロンは、センシングデータ流通市場構想を掲げ、センシングデータの流通を制御する技術“Senseek”の特許(特許5445722)を獲得した。実は私が発明者で特許の権利範囲に“データストリーム特許”に関する発明を含んでいる」

 --データストリーム特許とは

 「新規性のあるデータ項目を含むデータの流れである“データストリーム”を権利範囲とする特許だ。ネット上を流れるデータがデータストリーム特許の構成要件に該当すれば、ネットワークへ送出した装置は当該データストリームを生産したことになり、受信装置は当該データストリームを使用したといえる。データストリーム特許は、データの送受信装置の内部構造を調べることなくデータ利用に関する特許侵害の判断が可能になる」

 --IoT上のデータ利用の侵害を防げるのか

 「防げる。Senseekも、知財戦略を学んでいたからこそ、生み出すことができた特許だ」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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