国鉄ファンが驚喜した“岡山の奇跡” 絶滅秒読みだった「湘南色」が存続へ

2017.4.15 16:15

 昭和62年春に国鉄が消滅し、JRが発足してから、ちょうど30年。移行当時に走っていた国鉄型車両は、大部分がJR投入の新車に取って代わられた。しかし「湘南色」「特急色」といった国鉄時代のカラーリングの現役車両も残っている。それらの車両を使ったイベント列車の運行も開催されており、ファンの目を楽しませている。

 外装に昭和の香り

 戦後の高度成長期、首都圏や関西圏の通勤輸送を担った103系。国鉄の通勤電車の定番ともいえた、おなじみの車両は分割民営当時、JR北海道、四国を除く旅客4社で約3400両も在籍していた。ところが、JRになると次々と姿を消し、東日本、東海では全滅、西日本と九州に約200両いるだけになった。

 貴重な国鉄型車両。中でも人気を集めているのは、国鉄時代の懐かしい塗装を施され、「昭和」の香りを漂わせているベテランたちだ。JR移行後、車両のデザインは各社に任され、生き残った国鉄車両にも独自の塗装を行うケースが多くなっているからだ。そんな状況の中、岡山で起こった「奇跡」がファンを驚喜させた。絶滅が秒読みだった「湘南色」が存続することになったのだ。

 「残して」の声に応えた

 JR西日本は平成22年から、国鉄時代から残る車両の外装を、地域ごとに1色に統一。京阪神は除き、中国地区は黄、京都地区は緑、和歌山地区は青緑に順次塗り替えられてきたのだ。岡山電車区に配置される200両以上の対象車両もほとんどが黄色単色となり、国鉄時代のカラーリングは、緑とオレンジの2色の湘南色に塗られた115系の6両(2本の3両編成)だけとなった。

 この6両も今年に入り、工場に全般検査入りする際に黄色に塗り替えられる予定だったが、「利用者からこれまでの姿を残してほしいという声があった」(JR西岡山支社)ため、湘南色の存続を決定。すでに1編成は検査を終え、ピカピカの緑とオレンジの車体で山陽線、赤穂線、伯備線などで運行を始めている。

 湘南色は昭和25年、東京口の中長距離電車として登場した80系に初めて採用された。湘南地区で当時見られたみかんと緑の葉をイメージしたという説があり、以来、急行型の153、165系、近郊型の113、115系などに受け継がれ、全国の直流電化区間で活躍した。現在は地方で残るのみとなっている。同支社では「懐かしさを感じられる車両を残して岡山エリアの鉄道の魅力をアピールしたい」としている。

 イベント列車で活躍

 湘南色と並び、国鉄を強くイメージさせるのがクリーム色に赤い帯をあしらった塗装の「特急色」だ。新幹線が開通する前の33年、特急「こだま」で採用されて以来、電車の485系、183系、気動車の82系など、ほとんどの国鉄特急型車両を彩り、日本人が思う在来線特急といえばこの色といっても過言ではないだろう。しかし現在、この色で残っているのはJR東日本に残る189系1編成(6両)だけになった。

 この編成はイベント、臨時列車に引っ張りだこだ。JR東日本は昨年12月、中央線特急「あずさ」の運行開始50年を記念した特別列車にこの編成を充当し、ファンを喜ばせた。

 一方でファンにとっては残念なニュースもある。昼は座席、夜は寝台と昼夜を問わずに特急電車として走り続けた583系が引退する。夜行では「明星」「はくつる」、昼行では「しらさぎ」「はつかり」などとして走った名車は、JR東日本に1編成(6両)のみ、クリーム色と青の国鉄オリジナル塗装で生き残り、臨時列車に使われてきた。しかし車齢40数年と寄る年波には勝てなかった。

 JR東日本秋田支社は4月8日、秋田-弘前間でさよなら運転を行うと発表した。菊地正支社長は記者会見で「新幹線が通る前、私たちの世代は、この夜行列車で上京して入社式に出た」と懐かしんだが、多くの人はノスタルジーをもって共感するに違いない。

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