【Jトラスト インドネシア戦略】(4)簡易営業拠点を全国展開

2017.5.18 05:00

 ■カフェ併設支店も新設

 ジャワ島中部南岸に位置する古都、ジョクジャカルタ市の中心部から東へ車で約3時間走った農村地帯に、クボタの農機具を扱う販売代理店が現れた。

 ここには代理店社員のほか、Jトラストグループの割賦販売金融会社、グループリースファイナンスインドネシア(GLFI)の社員2人が間借りする格好で常駐。ユニホームの背中に書かれている「Fast」の文字通り、リースでの農機具購入を希望する農家に対し迅速審査で対応している。

 こうした営業姿勢を代理店、農家とも評価。代理店の担当者ルディアント・ラハルジョ氏は「融資決済が早いので取引しやすい。収穫量を増やしたい農家が購入していくので農機具が足りず納入待ちの状態だ。GLFIと組んでよかった」と喜ぶ。

 ◆期待の“大型新人”

 約1ヘクタールの田畑を持つ農家のジョコ・ウィヨノ氏は昨年12月、トラクターを頭金80万円、残り200万円をリースで購入した。「収穫期は年3回あり、他人の田畑にも収穫に有料で行くので収入は4倍に膨らんだ。1年で回収できる」と満面の笑みを浮かべた。

 インドネシアの農家は所得が低く、クボタの農機具はローンでなければ購入できない。GLFIが割賦販売することで、水牛や人手に頼っていた農作業を大幅に効率化できる。収入が増えるので生活水準も向上する。GLFIのオペレーションマネジャー、アンドリス・バクティア氏は「代理店、クボタ、われわれ、さらに農家の四方よし」と誇らしげに語った。

 「POS」と呼ばれるこうした簡易営業拠点は24まで増え、融資残高は昨年9月の事業開始から半年強で1000億ルピア(約8億5000万円)の大台を超えた。延滞債権は4月末時点でゼロという。GLFIを共同で設立したタイの上場企業、グループリース(GL)が東南アジアで蓄積した与信コントロールのノウハウを生かしているからだ。

 顧客獲得、審査、貸付金の回収などはGLFIが担うものの、ファイナンスはJトラスト銀行インドネシア(BJI)が受け持つ。販売対象商品や規模が拡大すれば貸し出しも増え、BJIの収益に貢献する。

 期待の“大型新人”だけにJトラストの藤澤信義社長は「インドネシア全土にPOSを張りめぐらせる」と明言する。支店を設置できないところにデスクとパソコンを置いて金融サービスを提供、いわばBJIの代理店として活用していく考えだ。

 ◆日系企業へ認知向上

 一方で、リアルな店舗の設置にも力を入れる。リストラの一環として支店の統廃合を進めてきたが、今年は10店舗を新設する。ATM(現金自動預払機)の増設にも取り組む。

 マーケティング担当のボニー・ワヒュディ部長は「日系企業への認知度も高めるため、イオンモールへの出店を検討している」という。ジャカルタにおけるビジネスやショッピングの中心地で日本人も多く集まるブロックMに今年1月、ATMを備えた「パパイヤキャッシュオフィス」をオープンした。

 ジャカルタ中心部から約60キロ離れ、日系企業が集まる「カラワン工業団地」にも支店を6月に開設する。地場銀行にもないカフェテリア併設店だ。日系企業向け営業部門を担う北岡望部長は「地場企業だけでなく日系企業にもアプローチできる強みを生かす。そのための看板として必要」と支店設置の狙いを話した。

 高い経済成長が見込めるインドネシアは銀行にとって魅力的だ。しかし地場銀行ですら同国の隅々まで金融ビジネスを展開しているわけではない。

 浅野樹美Jトラスト常務は「地方では口座開設率が20%程度で、銀行サービスはほとんど使われていない」と指摘する。だからこそJトラストグループは支店とATM、POS、さらにはモバイルバンキングを用意し、全国津々浦々で使える金融サービスを提供、訴求力を高めていく。(松岡健夫)

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