【タカタ会見詳報(2完)】負債総額「現時点では…」 1年半ぶりの会見「申し訳ない」

2017.6.26 16:32

 --負債総額は3800億円とのことだが、トヨタは「タカタに対するリコール費用の求償債権が5700億円に達する」と発表している。最終的な負債総額はいくらになるのか

 高田会長兼社長「3800億円は、(あくまで)3月期決算で示した負債総額の合算数字だ。リコールに基づく負債がどれくらいに上るか、なかなかわからないという特殊事情がある。自動車メーカーと協議がまとまっていないためだ。したがって決算数字では合理的な見積もりができていない。一方で、民事再生手続きに入ると負債額を確定する手続きがある。自動車メーカーから再建が届け出され、それが認められるかどうか、という手続きの流れになる。したがって、今の時点では3月期決算の数字しか申し上げられない」

 --概数としては1兆円を超えるか

 「再生手続きの中で固まっていくので、概数も現段階では認識していない」

 --リコール製品の回収率は世界で何割くらいか

 清水取締役「具体的な数字がなかなかつかめていない。メーカーではある程度つかんでいると思うが、国交省の発表によると日本国内なら回収率72~73%。米国は約36%と聞いているが、その他の国については具体的につかんでいない」

 「今後スポンサーが付いた時点で、PSAN(相安定化硝酸アンモニウムを使用した)インフレーター(ガス発生装置)をどうやって供給していくか。今のところ、PSANインフレーターの生産は2020年3月までにすべて終了すると見積もっている。スポンサーが付き、新生の会社になった後のPSANインフレーター供給は、現在のタカタからスピンアウトした仮名『リストラクチャド・タカタ社(RTK)』が、20年3月までリコールに必要な生産を続ける計画だ」

 --タカタという優秀なサプライヤーがなぜ民事再生に至ったか、経営責任をどう総括するのか

 高田会長兼社長「当社は自動車の安全部品に特化してきた。もともとシートベルトに始まり、時代の要請に応じてエアバッグをやってきた。当然ながら品質第一主義であり、PSANインフレーターの設計品質についても、米国の基準の3倍(厳しい条件)にして試験を行い、クリアした上でさまざまな部材の採用を決めてきた。結果として他社と異なる製品という結果になったが、他社に対する優位性を確保するためには新たな部材を使わなくてはいけないと当時は判断し、採用を決めた。社内では『意地悪テスト』と呼んでいるが、色々な条件で、自動車メーカーのスペックを何倍にも厳しくした試験を複数回繰り返し、自信を持って出した製品だ」

 「しかし一連の問題が起こってしまった。なぜ起きたのか非常に不可解だし、いまだに(問題の)再現性がない。化学分野で世界的に優れているドイツのフラウンホーファー研究所にデータを渡して解析をお願いしたが『同じ条件でも問題が再現しない』との結果が出て、なにが悪かったかわからない。とはいえども実際に問題が起きている。そこで自動車メーカーにすべての情報を提供し、他社のインフレーターに交換することも含め、協力させていただいてきた」

 「予見不可能だったとはいえ、問題の解決をしなくてはならない。NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)にデータ提供して解析を進めてきたが、残念ながら最終的な決着がまだ付いていない。ただ、ほぼすべての死亡事故は製造段階に瑕疵があったのではないかということがスコープに入っているのは事実であり、

それについてはすぐリコールし、決算書にもあるように引き当てをすべて行い、費用計上して自動車メーカーにお支払いした」

 --会長は2015年11月の会見以来、公の場に出なかった。消費者軽視が甚だしいのではないか

 高田会長兼社長「確かに、久しぶりに表へ出てきたわけだが、多くの方から『再建プロセスについて直接語るのは適切でない』『外部専門委員会に任せて、余計なノイズを発するな』という指摘がありましたので、皆さんのご期待に沿えず恥じておるが、客観的なこと以外の言動は控えることにした。結果として、外に出て話していないという残念な形になっているが、こうした考えでやってきた。私が個人的に自動車メーカーと協議しているということもない。唯一、各メーカーに対し、全体的に時間がかかり過ぎているので『(対応を)早急にお願いしたい』『(時間がかかりすぎると)われわれも安定供給ができなくなるかもしれない』という『お願い行脚』をしたことあるが、そのプロセスも表に出すべきことではないと考え、結果としてこういう形になり、個人的には非常に申し訳なく思っている」

 --新しい会社に移行後、何かの肩書きをもらうことはないのか

 高田会長兼社長「私はタカタの仕事しかしていないし、私のような者が新経営陣に影響を与えるポジジョンに残ることは、もし私が逆の立場だったら非常に迷惑な話だと思う。

 以前にドイツメーカーを買収したが、その創業ファミリーはトランザクション終了の翌日から一切姿を見せず、自分宛の郵便物を受け取るために工場に数回来たくらいだった。それを経営者として素晴らしいなと思ったし、(私は)これだけの問題を起こしたわけですから」

 「残念ながら最終解決がまだ見えておらず、時計が逆転している状況なので、

明日の株主総会でも全役員の再任を議題にすることになる。何も責任を感じていないのか、と思われるかもしれないが、新しい会社に引き継がなくてはならない。中には『新しい経営陣に残ってほしい』といわれる方がいるかもしれないが、しかし私に限ってはそれはない」

■詳報(1)高田氏「心よりおわび」自動車メーカーとの調整難しく 裁判所管理下で再建 に戻る

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