金融庁、仮想通貨2社に業務停止命令 コインチェック、来週にもNEM補償

2018.3.9 06:13

 金融庁は8日、580億円分の仮想通貨が流出した「コインチェック」(東京)を含む仮想通貨交換業者計7社に業務改善命令などの行政処分を出した。うち登録申請中のみなし業者の「ビットステーション」(名古屋市)と「FSHO」(横浜市)の2社では顧客資産の私的流用などが確認され、1カ月間の業務停止も命じた。交換業者が業務停止命令を受けるのは初めて。顧客保護やマネーロンダリング(資金洗浄)対策といった経営管理体制が不十分だと判断した。1月29日に業務改善命令を受けたコインチェックに対しては、経営体制の抜本的な見直しを求め2度目の改善命令を出した。

 全業者に立ち入りへ

 同庁はコインチェックの流出問題を受け、国内の全ての交換業者に立ち入り検査を実施する方針。業務停止の2社のうちビットステーションでは、大株主の経営幹部が利用者から預かった仮想通貨ビットコインを私的流用していた。FSHOは本人確認を怠るなど社内規則に違反していた。ほかに改善命令を受けたのは「バイクリメンツ」(東京)、「GMOコイン」(同)、「テックビューロ」(大阪市)、「ミスターエクスチェンジ」(福岡市)。行政処分した7社には、今月22日までに改善計画の提出を求めた。また同庁はみなし業者のうちビットステーションと「bitExpress」(那覇市)「来夢」(三重県鈴鹿市)の3社から申請取り下げの申し出があったと明らかにした。

 一方、コインチェックは8日の記者会見で、仮想通貨「NEM(ネム)」の顧客への補償を来週にも始めると発表した。流出後に停止したサービスも技術的な安全性を確認した仮想通貨から来週中をめどに再開する。

 26万人に466億円

 和田晃一良(こういちろう)社長は東京都内で会見を開き「多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわびする」と陳謝した。補償の対象は顧客約26万人で、ネムの値下がりを考慮して計466億円を補償する。

 この日の会見で、外部から電子メール経由で送り込まれたウイルスに従業員のパソコンが感染したことが流出原因だったと明らかにした。不正アクセスによって「秘密鍵」と呼ばれる口座のパスワードが盗まれ、不正送金につながったという。

 経営責任について問われた和田社長は「それを含めて検討する」と述べた。コインチェックは金融庁への登録申請中の見なし業者だが、大塚雄介取締役は「登録に向けて最善を尽くす」と述べ、事業を継続する考えを強調した。

 仮想通貨の代表格「ビットコイン」の価格が8日、急落した。8日午後に一時、前日の同時刻と比べて約10%安となった。複数の仮想通貨交換業者に対する金融庁の行政処分報道のほか、米国で仮想通貨への監視を強化する動きがあったことが影響した。

 国内の大手交換業者によると、8日午後8時現在のビットコインの価格は約107万円。8日未明に急落し、その後はやや回復した。米国では、米証券取引委員会(SEC)が7日の声明で、交換業者はSECへの登録が必要との見解を示していた。

【用語解説】仮想通貨

 インターネット上で商品購入や送金に利用できる電子データで「ビットコイン」が代表的。円といった法定通貨とは異なり、中央銀行のような発行者や流通の管理者がいないのが特徴。日本では改正資金決済法によって仮想通貨交換業者を登録制とし、これまでに16業者が登録されている。

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