パナ、世界最大市場で超小型EV参入 ライバルは中国勢、車載電池の性能アピール

2018.6.13 06:35

 自社が生産する車載電池の普及を見越して、中国で超小型の電気自動車(EV)に参入を決めたパナソニック。現地のEVメーカーと提携し、パナソニックの車載電池の性能をアピールし、国の強力な後押しで世界的な勢力を誇る中国の車載電池メーカーを向こうにまわして、世界のEV市場の中心になるマーケットで存在感を示したい考えだ。(中山玲子)

 参入しやすいEV市場

 車載電池を制する者が世界を制するとも言われるEV市場。EVは構造が複雑なガソリン車と違って、基本的には車載電池とモーターさえあれば動く仕組みだ。部品数もガソリン車が約3万点とされるのに対し、EVは約1万点と大幅に減少。このため、車載電池などを手がける電機、機械メーカーと自動車メーカーの垣根はEV普及によって無くなっていくと予想されていた。

 こうしたなか、パナソニックは世界のEV市場の中心となりつつある中国で、商用車としての超小型EVという新分野に挑む。津賀一宏社長は「高い安全性が求められる一般車は自動車メーカーにお任せする」としたうえで、「スピード感ある中国を攻める」と強調。車載電池事業では、米テスラやトヨタ自動車が重要なパートナーになっていることもあり、現時点では自動車メーカーの主戦場である領域までは入らない考えだ。

 商用車から市場拡大

 今後、EVの普及によって自動車市場はどう変わってゆくのか。ガソリン車より構造が簡素なEVは、これまでよりも用途が拡大しそうだ。価格帯や用途によって、EVは高級一般車、大衆一般車、モビリティのような商用車に大きく分類されるとみられている。とくに、商用車では短距離移動や特定ルートの往復などでEVの需要が高まる見込みで、自動車市場に新規参入する場合、この商用車の領域が最もハードルが低いとされる。パナソニックも、自社で生産する高性能の車載電池を武器に商用車に挑む。

 パナソニックを中心とする日本の車載電池メーカーに脅威となるのが、中国勢だ。寧徳時代新能源科技(CATL)は2011年創業の新興メーカーに関わらず、中国政府の外資排除策を追い風にシェアを急拡大。CATLや比亜迪(BYD)を中心に、中国勢のシェアは世界の半分以上を占め、海外メーカーにとっては無視できない存在になっている。

 中国市場にどう対応

 規模で存在感を発揮する中国勢に対してパナソニックは「同じ土俵で闘うつもりはない」(伊藤好生副社長)とし、技術力の高さを武器にしていく考え。価格競争とは一線を画し、納入によって利益を見込めるパートナーを選ぶ方針だ。

 パナソニックにとって、中国は重点地域である。現地の電池メーカーがライバルになるとはいえ、世界の最大市場となる中国は同社にとって将来、多くの顧客が生まれる魅力的な市場でもある。今後、中国市場とどう関わっていくのか。同市場でどのように存在感が発揮できるかが、世界のEV市場の勝敗につながりそうだ。

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