「GC」はやはりレッドカード? 上場企業倒産の注記率100% 内部統制や統治に不安

2018.7.23 06:45

 経営危機の危険サインとされる「GC注記」が付された企業の変調が相次いでいる。近年の上場企業倒産のGC注記率はほぼ100%で、内部統制や企業統治に不安を抱える企業も散見され、動向が注目される。(東京商工リサーチ特別レポート)

 GC(ゴーイング・コンサーン)とは企業が将来的に事業を継続することを前提とする考え方のことで、GCに疑義やリスクがある場合に決算短信や有価証券報告書に注記がなされる。一般的には売上高の急減や債務超過、主要取引先の消失が発生するなど経営が危機に陥った時に、GC注記が付けられることが多い。

◆会社更生法の適用を申請した日本海洋掘削

 東証1部上場の海洋掘削専門企業、日本海洋掘削(東京都中央区)が6月22日、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。同社は2018年3月期決算で454億円の最終赤字を計上。債務超過に転落し、金融機関との間で締結していた財務制限条項に抵触。GC注記が記載されていた。

 同社は、世界の海域で石油や天然ガスの掘削を担う国内唯一の会社。国立研究開発法人「海洋研究開発機構」の地球深部探査船「ちきゅう」の管理も手がけ、影響も懸念されている。

 日本海洋掘削以外にもGC注記企業の変調が相次いでいる。

 2018年3月期に債務超過(単体)に転落した電子機器メーカー、田淵電機(大阪市淀川区、東証1部)は6月25日、事業再生ADR手続を申請した。事業再生ADRは法的整理手続と異なり一般債権者の商取引債権は対象債権に含まれない。

 今後は金融機関に元本返済の一時停止などを要請し、金融機関の合意を得て再生計画案の策定を目指していく。

◆洋菓子「ヒロタ」の運営会社は社長が事実上解任

 さらにGC注記企業には、内部統制や企業統治に不安を抱える企業も散見される。

 有価証券報告書の一部虚偽記載の疑いで証券取引等監視委員会から強制調査を受けたソルガム・ジャパン・ホールディングス(東京都品川区、JASDAQ)は6月27日、2018年3月期の有価証券報告書の提出が金融商品取引法に定める7月2日までに提出できず監理銘柄(確認中)に指定された。同社は東南アジアなどでバイオ燃料関連事業を行っている。

 法定提出期限の1カ月以内(8月2日)に有価証券報告書を提出できなければ整理銘柄に指定され、上場廃止となる。

 洋菓子「ヒロタ」などを運営する21LADY(東京都千代田区、セントレックス)は6月27日開催の株主総会で社長が事実上解任される事態が発生、経営の混乱が表面化した。

◆上場企業倒産のGC注記率はほぼ100%

 2010年以降、倒産した上場企業は28社。このうち直近決算でGC注記を記載していたのは25社にのぼる。記載がなかった3社は粉飾などの発覚で決算発表ができないまま倒産に至ったケースが中心。このため上場企業の倒産は、GC注記率が事実上100%といえる。

 上場企業は好決算が相次いでいるだけに、GC注記企業との格差が鮮明になっている。

 6月末時点でGC注記企業は29社。新興市場が中心だが、東証1部、2部上場や知名度の高い企業もある。深刻な経営不振にどう対処するのか、引き続き動向が注目される。

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