音楽誌のグラインドハウスが経営難 ミュージシャンにも未払い 大物ライターが代表

2018.9.10 06:45

 国内外のミュージシャン情報を発信する音楽雑誌「GrindHouse Magazine」の発行会社が債務の支払い遅延を引き起こしている。代表は著名な音楽ライターで、ミュージシャンへの未払いでもトラブルに発展している。(東京商工リサーチ特別レポート)

◆従業員や取引先に未払い

 「GrindHouse Magazine」を隔月で発行する(有)グラインドハウス(東京都目黒区)が債務の支払い遅延を引き起こしていることが、東京商工リサーチ(TSR)の取材でわかった。従業員給与や取引先への支払いが一部滞っている。

 「GrindHouse Magazine」は、2017年頃から発刊スケジュールも乱れている。

 同誌は、国内外のミュージシャンのインタビュー、ライブレポートなどを掲載するフリー(無料)マガジン。2000年に有料の音楽雑誌として創刊。フリーマガジンへ移行した2012年以降は隔月の発行体制となっている。

 「ヘヴィロック/ミクスチャーからパンク、ハードコア、メタル、エモ、インダストリアル、エレクトロなど、再分化されたジャンルの壁に捉われず、(中略)ストリートのヴァイブを持った“モダン・ロック”を紹介する音楽メディア」(同社ホームページより)

 グラインドハウスは、音楽ライターとして著名なA氏が代表を務め、音楽雑誌の発行やロックイベントの企画のほか、音楽レーベルとしてCD制作なども手掛けている。

◆代表のA氏はメタリカを日本に紹介

 A氏は1980年代にフリーの音楽ライターとして独立。世界的な人気ロックバンドの METALLICA(メタリカ)やRED HOT CHILI PEPPERS(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、GREEN DAY(グリーン・デイ)、LINKIN PARK(リンキン・パーク)などをいち早く日本で紹介したことで知られる。

 愛知を中心に複数のFM局で放送のラジオ番組「GrindHouse FM」でパーソナリティーを務めるほか、音楽番組などに出演するなど各メディアで活躍している。

 一見華々しい経歴にみえるが、経営するグラインドハウスの資金繰りは厳しいようだ。

 TSRが取材を進めると、取引先や記事のライティング業務を委託するライターに未払いが発生していることがわかった。2018年7月には東京地裁からグラインドハウスに元社員1名へ未払い給与227万円の支払いが命じられている。

◆CD制作をめぐってトラブル

 また、CD制作を巡っても、参加のために出資したミュージシャンらへの報酬支払いがトラブルに発展しているようだ。

 各方面への未払いが発覚する中、グラインドハウスが運営を委託していた公式ホームページ(HP)は、2018年6月を最後に更新が止まっている。

 関係者によると、入金が2017年春から一度もなく、A氏に複数回にわたり支払いを催促したが明確な説明はなかったという。この関係者は、「支払い額の減額を提案しても対応がなかった」と落胆している。

 TSRの取材で、取引先への未払いは少なくとも4社。元従業員への給与未払い金は少なくとも3名にのぼることがわかった。

 この他、CD制作に携わったミュージシャンへの未払いを含めると、未払い金の総額は相当な金額にのぼるとみられる。

 TSRはグラインドハウスに訪問と電話でコンタクトを試みているが、連絡が取れない状態が続いている。

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