三井物産、中小野菜種子会社と海外展開 アジア、欧州で販路開拓

2018.10.4 06:10

 三井物産は、中小の野菜種子会社とタッグを組み、海外進出を後押しする事業を本格化させる。今年2月に日本農林社(東京都北区)、久留米原種育成会(福岡県久留米市)の両社と共同で野菜種子の海外展開を行う「ジャパン・ベジタブルシード」を設立、既に中国とインドで試験栽培に着手しており、数年後に海外販売を開始する。日本の中小野菜種子会社は遺伝資源を持ち、新種改良の技術力も定評があるが、単独では海外進出しにくい。三井物産傘下のイスラエル企業が持つ、イタリアやトルコなどの販売開発拠点などを活用し、販路開拓する。

 三井物産は、新興国の経済成長を背景に野菜種子市場が拡大するとみて、昨年、イスラエルの野菜種子ベンチャー「トップシーズ・インターナショナル」を買収し、種子ビジネスに参入した。トマトやパプリカの種子が強みで、イタリアやスペイン、メキシコに販売・開発拠点を持つ。

 一方、日本の中小野菜種子会社は、病害に強いなどの遺伝資源を持ち、市場のニーズに応じた掛け合わせ技術への評価も海外で高い。だが、国際人材も不足し、海外市場開拓しづらかった。三井物産の販路を活用することで事業成長や技術継承につなげたい考えだ。

 日本連合の母体となる「ジャパン・ベジタブルシード」の資本金は1000万円で、三井物産が99.2%、日本農林社と久留米原種育成会がそれぞれ0.4%ずつ出資した。

 日本農林社はキャベツや白菜などの種子が強く、久留米原種育成会はキュウリやカボチャなどが得意分野。今後はブロッコリーやタマネギ、スイカ、ニンジンなどを扱う中小野菜種子会社の参加を呼びかけ、日本連合で品ぞろえを強化し、市場開拓したい考えだ。

 また、現地の気候への対応やトップシーズを通じて現地の商品ニーズを掘り起こし、商品開発にフィードバックさせる。

 野菜種子市場は、新興国の経済発展で、2016年に約52億ドル(約6000億円)と試算され、25年には2.8倍の146億ドルに拡大する見通し。中でもインド市場は所得が向上して野菜消費が増えるとみられるほか、中国やアジアも市場が拡大する見通しだ。

 世界の種子市場は大豆やトウモロコシなどの遺伝子組み換え技術に強い米モンサントや、中国化工集団が買収したスイスのシンジェンタといったバイオメジャーが市場の7割を握る寡占市場となっている。

 だが、野菜種子に目を転じると市場が細分化され、最大手のモンサントといえどもシェアは16%(2016年時点)で、タキイ種苗やサカタのタネもそれぞれ9%、8%と日本勢も健闘している。

 三井物産は、「技術力のある日本のメーカーを世界の舞台に登場させたい」(三井物産の渡辺徹アグリサイエンス事業部長)との思いがあり、中小企業を束ねることで、タキイ種苗などに続く第3勢力としての勝算があるとみている。

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