【トップは語る】不動産証券化協会 不動産投資信託の規模30兆円に

2019.6.12 09:33

 不動産証券化協会会長・杉山博孝さんに聞く

 --協会創立以来、初の会長交代だ

 「不動産証券化市場はこれまで岩沙弘道前会長(三井不動産会長)が精力的に環境を整備してきた。受け取ったバトンは重いものだが、後任の会長として、さらに発展させていきたい。不動産投資信託(リート)の資産規模は現在約21兆円。これを30兆円に拡大させる方針だが、これも通過点にすぎず、さらに拡大させたい」

 --どのような戦略で拡大させていくのか

 「対象資産の多様化が必要だ。これまではオフィスや商業施設、住宅で先行し、物流拠点、ホテルなどが加わってきた。今後は高齢者向け住宅や病院といったヘルスケア領域を増やしたい。病院などは医療法上の制約も多いが、セミナーなどを通じて理解を進めていきたい」

 --このほかの領域は

 「インフラ分野にも注目している。官から民へ流れが進み、コンセッション方式で、空港、道路などが民営化されている。こういったインフラに対する機関投資家の関心も高く、国内インフラへの投資に結びつける。また、国内投資家の海外不動産への投資意欲も大きく、投資対象に組み入れていきたい」

 --協会としての重点的な取り組みは

 「国連が定める『持続可能な開発目標(SDGs)』や『ESG(環境・社会・ガバナンス)』を協会として推進していくことがまず第1。運営事業者も、SDGsを十分意識した運用を進めていくことが重要だ。さらに技術革新への対応だ。人工知能(AI)やロボット化などを活用して、不動産と金融の融合をビジネスに取り入れていくことが新しいビジネスにつながる。そして最も重要なのは、コンプライアンスだ。人材育成にも力を入れており、インテグリティー(誠実さ)を業界のDNAにしていきたい」

【プロフィル】杉山博孝

 すぎやま・ひろたか 一橋大経卒。1974年三菱地所入社。企画本部経理部長、執行役員、取締役兼専務執行役員などを経て、2011年社長、17年に会長。不動産証券化協会では17年5月に副会長、19年5月、会長に就任。

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