【広報エキスパート】小林製薬 “あったらいいな”の背景も発信

2019.9.19 09:10

 小林製薬 広報・IR部長 木村孝行氏に聞く

 --インバウンド(訪日客)需要が高まる一方です

 2014年に中国の大手ポータルサイト「捜狐(そうふ)」で、「日本に行ったら買うべき12神薬」という見出しで、12の医薬品が取り上げられ、そのうち5製品が当社の製品でした。「アンメルツヨコヨコ」(消炎鎮痛剤)、「サカムケア」(液体絆創膏)、「熱さまシート」(冷却剤)、「ニノキュア」(外皮用薬)、「命の母A」(女性保健薬)です。それが追い風となり、「爆買い」と言われるようになった要因にもなり、その後もインバウンド需要は右肩上がりで伸びています。

 --人気の要因は

 これまで、コーポレートスローガン「“あったらいいな”をカタチにする」のもと、生活者の困りごとに目を向け、解決するためのアイデアを出し、他にはないユニークな新製品を提供できるよう努めてきました。多くは「ニッチ」な製品ですが、他に代わるモノがない、なくてはならない愛用品と言われるようになりました。外国人にもどういう製品なのか、ひと目で分かるよう「熱さまシート」や「のどぬ~る」といったネーミングやパッケージなどを工夫した効果だと思います。「熱さまシート」には、寝ている男性の額に冷却シートを乗せたイラストを採用。シートに施した冷却効果のある粒まで細かく表現しています。

 --中国での広報展開は

 北京や上海など主要都市の一定以上の収入がある層に対して、小林製薬の知名度について調べたところ、生活者の8割以上が「知っている」もしくは「聞いたことがある」と回答しました。大半はさまざまな当社の製品を通じて社名を知っているのであり、これからは当社の歴史や強み、経営理念などを通じて小林製薬を理解していただく必要があります。また、中国でトラブルが発生した場合の早急な対応など、危機管理広報体制を強化していきます。

 --「小学校に洋式トイレプレゼント」が9回目を迎えました

 09年に、水洗トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」の発売40周年を記念して、売り上げの一部をもとに世界自然遺産の知床、白神山地、屋久島、石見銀山などにバイオトイレを寄贈しました。この活動から派生して「公立の小学校にトイレをプレゼントできないか」という話が持ち上がり、翌10年から「小学校に洋式トイレプレゼント」がスタート。今の子供たちは、自宅や商業施設、駅構内などで洋式トイレの生活が中心で、和式トイレの使い方が分からず、体調を悪くする子供たちも増えているようです。こうした現状を改善したいということもありました。

 --100校への寄贈を達成しました

 創立100期を迎えた17年10月に「全国47都道府県に1校以上・累計100校」の洋式トイレの寄贈を達成。100校目の熊本県八代市の小学校の贈呈式には社長の小林章浩が出席、地元メディアでも紹介されました。今年は22校からの応募があり、10校が選ばれました。日本には約2万校近い公立小学校があり、1年で10~12校に寄付したところでわずかな貢献しかできませんが、今後とも継続し、全国どこの小学校でも「知っているよ」と言われるような取り組みにしていきたいと思います。

 --広報体制は

 広報・IR部のメンバーは、私を含めて14人。大阪(8人)は、各紙経済部を対象とした企業広報、IR(投資家向け広報)、CSRを担当。東京(6人)は、新聞、雑誌、ウェブメディアを対象とした製品広報、社内報「AOITORI」(隔月刊)の発行を中心に担当しています。これからは、企業広報、製品広報ともに、ステークホルダーごとに「背景にはこんなことがある」という付加価値のある情報発信を心掛け、「“あったらいいな”の小林製薬」の認知度をさらに高めていきたいです。(エフシージー総合研究所  山本ヒロ子)

【プロフィル】木村孝行

 きむら・たかゆき 1994年関西学院大社会卒。証券会社、法律事務所を経て2004年小林製薬入社。法務グループ長、総務部総務株式グループ長、経営企画部経営戦略グループ長、広報総務部広報・IRグループ長などを経て18年から現職。

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