基準地価 地方被災地は大幅下落 駅近は上昇 二極化進む

2019.9.19 19:20

 都道府県地価(基準地価)で、地方の商業地が28年ぶりにプラスに転じたのとは対照的に、地方の住宅地は依然としてマイナス0・5%と下落傾向が続く。東京、大阪、名古屋の三大都市圏や地方都市の駅前などでは上昇が続く一方、西日本豪雨で甚大な被害に見舞われた岡山県倉敷市真備町など被災地では下落が顕著となり、二極化が鮮明だ。

 建設機械や重機械が並ぶ川岸で堤防工事が進められる真備町。平成30年の西日本豪雨で堤防の決壊や土砂崩れなどの大きな被害が出た。真備町は、同じく豪雨で大きな被害のあった広島県三原市とともに、住宅地の地価が大幅に下がった。国土交通省によると、真備町は1平方メートル当たり2万8600円(前年比マイナス16・1%)、三原市は1万6千円(マイナス15・8%)で、全国2万の調査地点で下落率1、2位だった。

 東京都心や大阪、名古屋の三大都市圏と地方圏の中核4市(札幌、仙台、広島、福岡)では、住宅購入への意欲が堅調で地価を下支えしている。

 近年、職場と居住地の距離が近い「職住近接」を望む人たちが増えており、首都圏では交通利便性が高い都心の駅前を中心に地価の上昇が続いている。大阪でも駅まで徒歩圏内の距離にある住宅地などで需要が堅調に推移し、上昇につながった。また、駅から近い物件は資産価値の上昇が期待できることも駅近エリアの人気を支えている。

 ただ、東京23区では分譲マンションの平均価格が7千万円台と高止まりしているため、住宅ローン金利が低水準にもかかわらず購入可能な層は限られている。不動産経済研究所の調査で8月の首都圏の新築マンション発売戸数が前年実績を上回ったが、五輪の選手村を転用して東京・晴海で整備される「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」の第1期販売(600戸)という特殊要因によるものだ。

 東京都内の動きに関し、大和ハウス工業の担当者は「まだピークとはいえない。今後も上昇傾向が続くのではないか」と言及した。一方で4大都市を除く地方では「北海道のニセコなど観光で特色を出せれば独特な成長ができる」(不動産協会の菰(こも)田(だ)正信理事長)が、独自色を出せなければ厳しい。今後も都市と地方との二極化は進行するものとみられる。(岡田美月、大坪玲央)

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