増発・編成・時間短縮…関東圏の鉄道は3月14日のダイヤ改正でどう変わるのか

2020.1.5 09:01

 毎年冬のこの時期になると、JR各社とJRに乗り入れている各社のダイヤ改正の発表が行われる。次回のダイヤ改正は、2020年3月14日(土)だ。

 JR東日本では、相鉄・JR直通線の開業が昨年11月30日に行われ、その際に埼京線のダイヤ改正があり、それにともなって相鉄とりんかい線のダイヤ改正が行われた。

 JR東日本の場合、11月末か12月頭にイレギュラーなダイヤ改正を行うことがときどきある。しかし、ダイヤ改正はJR各社に関わることであり、基本的には貨物も含めて同時に行う。あわせて、乗り入れなどの関係がある路線もダイヤ改正を行う。

 今回のダイヤ改正において、首都圏通勤電車関連はどう変わるのかを見ていこう。

 深夜や早朝、中央線では快速線が運転されず、緩行線のみで運転されている。普段、東京駅発の列車は中野まで主要駅にしか停車せず、「中央特快」などは立川まで主要駅停車となっている。しかし、深夜や早朝には、緩行線を東京から運行する列車が走り、千葉方面へは御茶ノ水で折り返しとなっている。

 こうした輸送体系が、変わる。これまでの形態だと、深夜の時間に「帰るのに時間がかかるなあ」と思っていた人も、以前に比べて時間がかからなくなる。

 では、どのような運行形態になるのか。深夜や早朝の列車でも東京駅に向かう列車は、すべて快速運転を行う。また、千葉から御茶ノ水で区間運転していた列車は、すべて中野・三鷹まで直通する。

 中野~御茶ノ水間の複々線は、1933年に完成した。そのころは東京発の多くの列車が緩行線を走っていた。快速線の走行は朝夕ラッシュ時のみだった。このころから深夜・早朝の御茶ノ水折り返しが行われている。59年には緩行線が中野まで運行されるようになった。複々線は69年に三鷹まで延長し、現在のような運行形態になる。

 この運行形態の変化は、大きな意味をもつ。終電付近、東京駅0時15分発高尾行、0時25分発豊田行、0時35分発武蔵小金井行が快速運転を行うようになり、各列車所要時間が8分から10分程度まで短縮する。新宿発1時01分の三鷹行は、これまで東京発だったものが千葉発になる。

 中央線で移動する人

 早朝時間帯に中央線で移動しようとした際、時間がかかると思っていた人も多いだろう。武蔵小金井発4時33分の各駅停車は、これまで5時22分に東京駅についていた。しかし新しいダイヤでは、5時11分に東京駅につく。緩行線で各駅に停車していたのと、11分も差がついている。早朝に東京駅近辺で仕事をする人にとっては、ありがたいダイヤだ。

 こうしたダイヤの変更は、もっと前から行われるべきだった。中央線は、なぜ深夜に各駅列車しか走らないのか、と多くの人が疑問に思い、人によっては「家に帰るのに時間がかかる!」と不満を感じていただろう。そういった状況が改善されることで、多くの深夜・早朝帯の利用者は喜ぶ、ということになる。

 では、なぜ中央線の深夜・早朝時間帯の輸送体系を変えるのか。中央線は2023年度末に、グリーン車を連結させる予定になっている。それにともない、現在の10両編成から12両編成へと、増結されることになる。そうなると、中央線のオレンジバーミリオンの帯をした車両は、緩行線内に入れないことになる。緩行線内は10両までしか対応していない。中央線の各駅ホームは、12両対応のために工事を行っている。

 中央線へのグリーン車導入という先を見越して、中央線と中央・総武緩行線の輸送体系を変えるのだ。このように変えることは、利用者にとって速達性の向上や、時間帯によって運行体系が変わるという現在の分かりにくい状況を変える意味で、評価できる。この運行体系の変化は、多くの人に受け入れられるだろう。

 空港アクセス・通勤向け特急の強化

 都心から成田空港はちょっと遠い(しかし遠すぎることはない)。その間には空港アクセスの特急列車が走っている。「成田エクスプレス」である。訪日外国人の増加や、海外に向かう旅行者の利用に備え、東京~成田空港間で一部の列車が6両編成だったものが、全列車12両編成になる。

 この列車は、多くの場合新宿方面や横浜方面から6両編成ずつでやってきたものが、東京駅で併結し、成田空港へと向かうようになっている。一方、横浜方面のみの列車は12両で終着駅まで行くことができる。

 空港アクセス列車としては京成の「スカイライナー」も人気で、高頻度運転を行っているものの、「スカイライナー」の場合は日暮里まで行かないと乗れない欠点がある。10月26日の京成ダイヤ改正で同列車が大増発し、多くの利用者を得ている中で「成田エクスプレス」も対抗策を考える必要がある。その中での増結ということだ。

 増結対象列車は、どの列車も新宿方面の列車であり、大船方面への増結か新宿まで12両で通すのかは未定だ。しかし、この列車の場合は分割・併合が可能なこともあり、東京駅での分割を期待したい。

 「スカイライナー」とは違い、東京の各地、あるいは横浜方面へのダイレクトアクセスも可能な列車なのだから、その特性を生かしてほしい。

 中央線では「はちおうじ」「おうめ」といった通勤向け特急が人気を集めている。「おうめ」を増発、同時間帯に運行されていた「はちおうじ」の運転をとりやめることで、青梅方面への利便性を向上させる。

 八王子方面よりも青梅方面のほうが遠い印象があるので、地元の人の要望を取り入れた側面もあるのだろう。こういった変更には好感が持てる。

 どこが増発?

 ダイヤ改正で首都圏住民にとってありがたいのは、通勤電車の増発である。中央線では帰宅時間帯に東京~高尾間の「中央特快」を増発する。下りは1本、上りは2本だ。下りは東京発23時45分発、高尾着0時45分ということもあり、残業などで遅くなった場合でもこれまでより早く家に帰れるメリットが生まれる。この時間帯の「中央特快」増発は働く人にとってはうれしいことだろう。

 南武線では夕方帰宅時間帯に川崎~登戸間の列車を立川まで延伸、稲城長沼~川崎間の列車が立川発になる。総武本線では千葉終着の列車を成田空港まで延伸し、遠距離の帰宅客などの対応が行われる。

 今回のダイヤ改正で、中央線を中心に首都圏の運行体制が変わり、便利な鉄道となっていく。その中で、高輪ゲートウェイ駅開業が華を添え、ダイヤ改正の目新しさを向上させる。

 東武・小田急・メトロもダイヤ改正

 私鉄で注目なのは東武鉄道だ。東武アーバンパークラインは、全線での急行列車の運転を開始する。それにともない、柏~船橋間で所要時間を最大で11分短縮、大宮~船橋間で最大16分短縮となる。

 全線で急行列車が運転できるようになった理由として、逆井~六実間の複線化が完了したことが挙げられる。これにより運河~柏~船橋間で急行運転を行うことが可能になった。単線区間の春日部~運河間は、全列車が各駅に停車する。

 また乗換駅で終電繰り下げを行い、通勤向け特急の「アーバンパークライナー」には柏発が新設される。これにより、郊外エリアで暮らす人たちにとって使いやすい鉄道となることだろう。

 東京メトロ千代田線を介してJR東日本常磐緩行線と接続する小田急電鉄は、JRと同時期にダイヤ改正を行う。今回のダイヤ改正では、朝ラッシュ時間帯の各駅停車が全列車10両になり、輸送力が拡大する。

 東京メトロも、東西線や千代田線でダイヤ改正を行う。JRなどのダイヤ改正にあわせた形だ。

 今回のダイヤ改正の目玉は、中央線関連の深夜・早朝時間帯の輸送体系の変更である。また東武アーバンパークラインのダイヤ改正も、複線化という抜本的な改良でなしとげられたものである。

 今後、他の鉄道事業者も3月14日にあわせたダイヤ改正の発表を行う。また京王電鉄は2月あたりの改正を予定しているだろう。改正で列車ダイヤがどのように変化するのか、楽しみだ。(ITmedia)

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