地銀で遅れるデジタル化 フィンテック企業が先行、連携戦略で巻き返し

2020.7.6 06:50

 地方銀行による金融サービスのデジタル化が遅れている。新型コロナウイルスの感染拡大で、取引先の資金繰り支援に忙殺されていることなどが原因だ。一方、金融とIT技術を組み合わせた「フィンテック企業」は、オンラインで融資を完結させるなど先行している。地銀は、他行と連携するなどして巻き返しを図る考えだ。(岡本祐大)

 資金繰り相談で来店

 「(コロナ禍で)非対面サービスをさらに充実させる必要性を感じた」。こう話すのは、大阪を地盤とする池田泉州銀行の大塚篤史執行役員だ。

 同行ではカードの紛失届けなど一部の手続きをタブレットで処理できるが、コロナで増えた企業向け融資や住宅ローンの条件変更などの相談は、直接の聞き取りが依然、避けられない。多くの客が来店せざるをえなかった。

 ほかの地銀もデジタル化に着手している。横浜銀行は資金調達のスピードアップを目的に、横浜市信用保証協会との保証依頼手続きでデジタル化を試行。京都銀行は融資やローン契約を電子署名ができるようになし、千葉銀行は通帳アプリを導入した。

 ただ、すべての事業者向け融資が、申し込みから契約までオンラインでできるわけではない。多くの地銀がコロナ禍で来店自粛を呼びかけたものの客数が減らなかったのは、みな対面で融資相談などを受けなければならなかったからだ。

 即日300万円融資

 この点、新型コロナの感染拡大後、融資を短期間で実行し、行政の制度融資までの「つなぎ資金」需要で存在感を示したのがフィンテック企業だ。

 オリックスなどが出資する「アルトア」は会計情報の登録といった条件を満たせば最短即日で300万円まで融資が下りる。3月の申し込みは前年同月比で2倍に増加した。マネーフォワードはオンラインで完結するファクタリング(企業の売掛債権を買い取って代金を払う形の資金支援)サービスの4月の申込件数が昨年12月から倍増した。

 だが地銀は、膨大な顧客データを抱えるシステムの更新などでコストがかさみ、「デジタル化を一行単独でやるには限界がある」(地銀関係者)。さらに足元では、「新型コロナによる緊急対応で忙しく、それ(デジタル化の作業)どころではなかった」(別の地銀関係者)ことも、デジタル化の歩みを遅らせた。

 連携模索、AI活用も

 地銀が巻き返しに向け模索する方法の一つが、地銀同士の連携だ。千葉銀行や滋賀銀行など10行が参加する「TSUBASAアライアンス」、池田泉州銀行や群馬銀行など8行が参加する「フィンクロス」が代表例だ。

 池田泉州銀行などの共同出資会社フィンクロスデジタルの伊東眞幸社長は「地銀によってデジタル化の進捗(しんちょく)に開きがある」と指摘。連携には、集まるデータや知見の大規模化のメリットもあるという。

 伊東氏は「融資でのAI(人工知能)活用など、さまざまな可能性を検討している」と話した。

閉じる