TikTok規制に国内利用者も困惑 10~20代に急速普及、存在感増す

2020.8.10 07:13

 中国企業が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の規制論が浮上し、国内ユーザーの間で先行きを不安視する声が広がっている。15秒間、好きな音楽に合わせて踊るスタイルが人気で10~20代を中心に急速に普及。投稿に頻繁に使用される曲がヒットする現象も生まれており、関係者は動向を注視している。

 アプリ通じて友達

 「アプリを通じてできた友達もいる。使えなくなったら困る」。埼玉県川越市の高校1年、山根花美さん(15)は、著名人や気になる人の動画をほぼ毎日チェックする。6月、新型コロナウイルスの影響で休校していた学校がようやく始まると、制服姿で友達と一緒に撮った動画を投稿した。

 YouTube(ユーチューブ)やインスタグラムも見るが「TikTokがいちばん手軽でよく使う」。再生数の多い動画の曲やポーズは学校でも話題に。運営するのが中国企業とは知らなかったという。

 中国発のIT企業「北京字節跳動科技(バイトダンス)」は、2017年に世界各国でサービスを開始。「誰もが創造的な映像を作り、共有する」との狙いが当たり、米調査会社によると、これまでに20億回以上ダウンロードされた。

 しかし、収集された個人情報が中国政府に流出する懸念があるとして、各国で使用制限の動きが浮上。トランプ米大統領は米企業に売却しなければ米国内での事業展開を禁止すると表明した。

 日本でも埼玉県や大阪府、神戸市がTikTokのアカウント利用を停止。自民党の議連が使用制限を検討する。

 こうした動きが報道されると、サービスの動向を心配する投稿が相次ぎ「#tiktokなくなる前に」のハッシュタグ(検索目印)も生まれた。日本法人の広報担当者は情報流出を否定した上で「引き続き変わらず安心安全な運営を行う」と強調している。

 音楽業界も注目

 近年では「TikTok発」の流行も生まれ、音楽業界の注目も集める。米国では昨年、無名の黒人ラッパー「リル・ナズ・X」の「オールド・タウン・ロード」という曲が記録的にヒットし、楽曲に合わせてカウボーイの格好で踊る人が続出。日本でも男性シンガー・ソングライター瑛人の「香水」が、投稿に数多く使用され、チャートを急上昇した。

 博報堂などの調査によると、同アプリの利用者は音楽への関心が高く、ライブ配信などへの消費行動も盛んという。谷口由貴研究員は「新しいものに敏感なユーザーをつかんでおり、今後も存在感を増していくのではないか」と分析している。

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