副業活用が企業に拡大 戦略立案など重要ポジションも

2020.8.10 06:00

 新型コロナウイルスの感染拡大を機に、副業を活用する企業が増えている。在宅勤務の普及で、自社の従業員の副業容認や外部人材の登用を進めやすくなったことが追い風になっている。通勤時間の減少で浮いた時間を利用して仕事の幅を広げたり、コロナの影響による収入減を補ったりする機会にしたい人の意向とも合致しているようだ。

 日用品大手のユニリーバ・ジャパン(東京)は7月から、ブランド展開や市場分析など複数のプロジェクトを対象に副業で働く人材の募集を始めた。仕事はインターネットを通じた業務が基本で、出社する必要はない。担当者は「在宅勤務に慣れた人が増え、採用の壁が低くなった。地方や海外からの応募も期待している」と話す。コロナで仕事が減った企業と提携し社員を受け入れることも検討する。

 ヤフーも外部の副業人材に門戸を開くことを決め、7月から募集を始めている。グループの連携を深めるための戦略立案や新サービスの企画など、経営上重要なポジションも含めて100人程度を活用する。これまで交流のなかった人とも積極的に交わることで、川辺健太郎社長は「全てのユーザーに、より便利で革新的なサービスを届けたい」としている。

 一方、キリンホールディングスは7月から、主要子会社の従業員約6000人を対象に他社での勤務を解禁した。別の業界に挑戦し、社員の知見を深めてもらうのが狙いだ。

 KDDI(au)は社内の組織の枠を超えた交流を広げるため、希望に応じて就業時間の2割を目安に別部署の仕事に充てられる「社内副業制度」を6月から導入した。

 日本総合研究所の山田久主席研究員は「(コロナの影響で)事業の先行きが見えない中、新しいアイデアを持った人材を登用したいという意識が高まっている」と話す。

 副業の推進には、社員の働き過ぎを防ぐ労務管理が重要となる。政府は、本業の会社が副業先も合わせた労働時間を効率的に把握するためのルール整備を進めている。

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