日本初、衛星で宇宙ごみ回収 ベンチャーのアストロスケールが来年3月打ち上げ

2020.11.19 06:17

 宇宙ベンチャーのアストロスケールホールディングス(HD、東京都墨田区)は18日、運用を終えた人工衛星などの大型スペースデブリ(宇宙ごみ)を回収する実証実験のため、新規開発した人工衛星を来年3月に打ち上げると発表した。構想から7年余り、スペースデブリ回収の事業化への大きな一歩を踏み出す。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や内閣府によると、人工衛星を使った大型デブリ回収に成功すれば、日本初となる。世界的にも成功例はないとみられる。

 新規開発した回収用の衛星「ELSA-d(エルサディー)」は、縦横約60センチ、奥行き110センチの箱形で重さ175キロ。宇宙空間で太陽光パネルを翼のように展開して航行する。磁力でデブリを引きつけ、回収後はデブリと一緒に大気圏へ再突入させて焼却する。

 地球表面から約2000キロ以下の低軌道に向けて打ち上げる。実証実験では、特殊な磁気プレートを取り付けた「模擬デブリ(クライアント)」を同時に打ち上げる。軌道投入後に分離し、デブリを捕まえる「捕獲機(サービサー)」で回収できるかを確認する。実験は複数回行う。試験が終われば大気圏で焼却処分する。

 打ち上げはロシアの打ち上げサービス会社、GKローンチサービスが担当する。中央アジア・カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、ロシアのソユーズロケットに搭載して宇宙に送り込む。

 インターネット通信に使う人工衛星など大型のデブリは今後も増える見込み。宇宙ステーションなどとの衝突が懸念されており、軌道から回収する技術を確立すれば、ビジネスとして成立する可能性が高いという。

 アストロスケールHDは、スペースデブリ回収事業の将来性に着目し、元大蔵省(現財務省)官僚の岡田光信最高経営責任者(CEO)が2013年に創業した。JAXAと連携し、運用を終えた日本の人工衛星をロボットアームなどで回収する事業も計画している。岡田CEOは18日、「ビジネスケースを証明する上で重要なステップを踏み出せることは大変うれしく思う」との声明を出した。

 民間によるデブリ回収事業をめぐっては、宇宙ベンチャーのALE(エール、東京都港区)もJAXAや東北大学、中島田鉄工所(福岡県広川町)と共同で回収装置の開発に取り組んでいる。(松村信仁)

【用語解説】スペースデブリ 宇宙空間を漂う、寿命が尽きた人工衛星やロケットの部品など。宇宙ごみとも呼ばれる。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、地球上から確認されている10センチ以上のデブリだけでも約2万個ある。1ミリ以上となると1億個に達するとされる。ピストルの弾丸よりも速い秒速7~8キロで、地球周辺の軌道を猛スピードで回っている。運用中の人工衛星と衝突する事故も起きている。宇宙からのデータや通信に影響が生じる恐れもあり、各国はロボットアームや網で回収し、大気圏に落として燃え尽きさせるなどの対策を検討している。

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