携帯値下げ、消費者への恩恵は内容次第 複雑プランで乗り換え進まぬ恐れも

2020.12.1 20:57

 NTTドコモが主力ブランドでの値下げに踏み切ることで、実質的な市場競争が本格化する。総務省は事業者を乗り換えやすくなる施策で、格安スマートフォンを手がける仮想移動体通信事業者(MVNO)への移行も促進し、2段構えで消費者負担を軽減する絵を描く。一方、消費者が納得する料金が実現するかは値下げ内容次第で、今後発表される大手の割引に複雑な条件がつけば、再び料金プランが分かりにくくなる懸念もある。

 「(違約金見直しは)まやかし。本当の実態を隠して、表のきれいごとを集めて国民を欺いている」

 武田良太総務相は1日の閣議後会見で携帯電話大手を厳しい言葉で非難した。

 総務省は、昨年の制度改正で契約途中の解約にかかる違約金に上限を設けるなど、事業者間の乗り換えを促す施策を続けてきた。改正前の契約では乗り換えに違約金や手数料などで約1万5000円がかかる。ソフトバンクとKDDIは主力ブランドに移行したときにだけ、そうした費用を無料にする優遇策を設けており、武田氏はサブブランドへの移行を阻害していると怒り心頭だ。手数料について一部見直しは進むが対象は新規契約者のみで武田氏は「それ以前に契約した人は何の特典もない」と対応は不十分との考えだ。

 競争激化で消費者が安い料金に注目すれば、MVNOにも目を向け、さらに市場が活性化する好循環が生まれるというのが総務省のシナリオだ。武田氏も「一番恩恵を受けるのはMVNO」と豪語する。

 ただ、あるMVNO首脳は「大手の値下げに対抗するのは正直苦しい」と明かす。資本力で大手に対抗するのは困難で、災害時や混雑時の通信品質で劣るMVNOが選ばれるかは不透明。価格差のある現状でもシェア1割程度で低迷しているのもその証左だ。

 大手の家族や固定回線契約の有無などを条件にした割引では、恩恵を受けられない人も出てくるうえ、プランの分かりにくさにもつながっていた。KDDIとソフトバンクは、主力の大容量プランで約1500円を割り引く仕組みを導入しているが、その月の消費データ量が2ギガバイト以下という“高いハードル”を設けており、実効的な内容になっていない。

 昨年6月にドコモが実施した値下げでも、家族複数人の契約が必要で、「分かりにくい」との声が上がった。各社の新プランによって料金体系が複雑化する懸念もあり、競争活性化には、消費者目線の割引策が求められる。

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