【2021 成長への展望】伊藤忠商事社長・鈴木善久さん 脱炭素の取り組み 新中計に盛り込む

2021.1.19 09:03

 --2021年の経済動向をどう予測しているのか

 「新型コロナウイルスのワクチン接種が始まることなどから、春から経済活動が回復して、年末に向けて景気もよくなると、昨年後半時点では予測していた。しかし、国内の感染の急拡大やウイルスの変異種問題などもあって、春先までは景気は足踏みしそうだ。日本でのワクチン投与が始まり、東京五輪が目の前に迫り、夏に向けては高揚感が出てきて盛り上がってくるが、五輪後にいったん調整局面に入り、そして年末にかけて徐々に回復していくと予想している」

 --世界経済は

 「米国は、バイデン次期政権がコロナ抑制派で、経済優先ではないので、景気回復はスローダウンする。さらに、米中関係の先行き、香港問題や地政学リスクなどまだまだ複雑な要素は多く、不安定さを増したままの回復になる。ただ、国内、世界経済ともにワクチンの登場で、昨年よりは明るい展開にはなる」

 --21年度に新しい中期経営計画をスタートさせる 「5月に公表予定で取りまとめ作業を進めている。市場の期待にどう応えるかが第1のポイントだ。18年度、19年度に連結最終利益5000億円を達成した。しかし、20年度はコロナの影響もあって、2割減の4000億円を目標にしている。まずは、5000億円を基準とした収益力の回復が市場の期待だと考えており、これにどう応えていくかだ。1~3月の状況をみて計画を積み上げていく」

 --政府が2050年の温室効果ガス実質ゼロの目標を打ち出した

 「伊藤忠の『三方よし』の経営からは実質ゼロは自然な流れだ。18年に出した方針では、30年に再生可能エネルギー比率20%を目標に掲げたが、政府目標に沿っていくには、計画を見直していく必要がある。各国とも脱炭素を産業政策とする大きな流れで、差し迫ったものだ。中期経営計画に盛り込んでいく」

 --ファミリーマートをほぼ完全子会社化した。顧客データの活用などが重要になるが

 「ファミマは伊藤忠の生活消費分野バリューチェーンの根幹だ。物流の効率化、廃棄ロス削減、AI(人工知能)による需要予測などデジタル化を当たり前にやっていく。同時にデータ活用でも取り組みを急ぐ。その先行事例がターゲティング広告事業だ。リアルな店舗でのファミマの購買データと、NTTドコモの属性データを掛け合わせることによる新しい事業に着手した。今後はフィンテックなど、金融分野でも同様のビジネス展開が期待できる」

【プロフィル】鈴木善久 すずき・よしひさ 東大工卒。1979年伊藤忠商事入社。常務執行役員、ジャムコ社長、伊藤忠商事専務執行役員情報・金融カンパニープレジデントなどを経て2018年4月から現職。21年4月に副会長。宮城県出身。

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