JSOL、新規ソリューション創出を加速 新会社設立やデータサイエンス領域を強化

2021.2.9 11:00

 ICTサービスコーディネーターとして金融、製造、流通などの顧客のビジネスをサポートしてきたJSOLは、新規ソリューションの創出への挑戦を加速している。2020年10月に同社が理化学研究所と合弁で設立した新会社「理研数理」では産学連携の橋渡しを果たすことで、新規事業や新しいソリューションの創出に向けたビジネスを展開する。また、材料物性シミュレーションソフトウェア「J-OCTA(ジェイ・オクタ)」を活用した素材開発の支援や、医療機関と共同研究を進めるAI(人工知能)を活用したAI協調機械学習環境については、眼科分野を中心とした商用化に向けた準備を進めている。

新会社で産学連携の橋渡しを果たす

 「アカデミア(学術分野)のシーズとビジネスのニーズのマッチングを促し、新規事業やライセンス、新たな研究課題の創出に取り組んでいる。産学両方向の人財・知財・データを環流するプラットフォームの役割をマネジメントする」。JSOLデジタルイノベーション事業本部副事業本部長から、理研数理の取締役に就任した松崎健一氏はこう話す。

 理研数理が目指しているのは、数理科学を活用し、新たに知的財産を発明し、新規事業を産出することだ。当面は、理研の知財や研究員などのシーズを企業のニーズとマッチングさせて共同研究を組成する。将来的には、その研究活動から得られた知財の販売や、その知財を核としたサービスを開発・販売していく。製薬、自動車、金融などの分野を中心に、高度な数理技術や計算機シミュレーションの要求に応え、新しい価値の提供を目指している。

 例えば銀行に対しては、数理科学を活用して、企業の入出金明細などを分析することで、融資先の与信管理を短いサイクルで把握し、リアルタイムなアドバイスを行うことを可能にする。また、超高速な計算が可能なスーパーコンピューター「富岳」を利用した、理研発の超並列分子動力学計算プログラムを、理研数理経由で産業界へ幅広く発信し、ユーザーを拡大することにより、創薬にも貢献していく。

 日本が掲げる「Society5.0」は、高齢化やエネルギー問題などの社会課題の解決でも、高度なアカデミアの力が必要になる。理研数理が、アカデミアと民間事業会社のハブ機能を強化することで、Society5.0の課題解決を推進するエンジンのひとつになることも目指している。

 高度な理系人材の流出を防ぐため、理研数理ではプロジェクトごとに理研の高度人材を企業に貸し出す仕組みを構築する。好きな研究に打ち込みながら、アライアンス先の企業からも報酬を得ることにより、エンゲージメントの向上を促す。理研と民間の人材還流を通じて双方の価値を相乗的に高め、学問の発展と人材育成につなげる。

材料設計や素材開発を最新技術で支援

 一方、ものづくりの材料として近年多く活用される樹脂やゴムなどの高分子材の特性をコンピューター上で予測するシミュレーションソフトウェア「J-OCTA」に関しても、アカデミアの共同研究を通じて、新規機能の実装や提供価値の高度化にも力を入れている。

 「J-OCTA」は、ゴム・プラスチック・薄膜・塗料・電解質など多岐にわたる材料開発に関して、原子スケールからマイクロメートルスケールまでの材料特性をコンピューター上で予測する「材料物性解析ソフトウェア」だ。実験結果のみでは把握しきれなかった複雑な現象・物性を理解する知識発見ツールとして活用できる。それぞれのスケールに応じたシミュレータを共通のプラットフォーム上で連携し動作させることで、最先端の材料設計や素材開発を支援する。

 JSOLエンジニアリング事業本部材料技術部長の小沢拓氏は「熱硬化性樹脂の分子骨格をコンピューター上に再現して硬さを計算した事例(住友ベークライト)や、タイヤ材料内部の混ぜ物の構造に変形を加えた場合の挙動を予測した事例(横浜ゴム)など、ユーザー様の事例がさまざまなところで紹介され、現在ではWebサイト上で公開されている。最近は、AIを活用して材料開発を高速化するマテリアルズ・インフォマティクスについても、研究と機能提供が進んできている」と話す。

データを集約せずにAIを構築

 JSOLの協調機械学習環境は複数の拠点に点在するデータを1カ所に集めることなく、AIを構築できるのが最大の特徴だ。先端デジタル技術によって、さまざまな業務のデジタル化が進んでいく中、各社が日々生み出すデータ量は指数関数的に増加している。そういったデータからAIを学習し、業務効率化や、新しい事業価値の創出が進んでいる。

 通常、AIを使った機械学習を行うためにはデータは1カ所に集約されている。しかし、データが複数拠点に点在していたり、企業をまたいでデータを蓄積していたり、また、機微情報であるために社外のクラウドサーバーにデータを送信するのが難しかったりと、セキュリティーの問題以外にも、データの集約が難しいケースは珍しくない。

 そこで、JSOLが独自開発したデータを集約せずに、AIを構築(学習)するためのAI協調機械学習環境の活躍の場が広がる。

 JSOLデジタルイノベーション事業本部DX事業部コンサルティング部アソシエイトマネジャーの鈴木悠哉氏は「社会医療法人ツカザキ病院眼科の田渕仁志医師が主宰するシンクアウト社と連携し、AIを活用した緑内障診断システムを開発し、見落としが減ることと、診断スキルの高位均質化に効果をもたらしている。今後、眼科の他の病気の診断をはじめとしたAI医療機器横展開を進めたい」と話している。

社名:株式会社JSOL

本社所在地:東京都中央区晴海2-5-24 晴海センタービル

設立:2006年7月

資本金:50億円

従業員:1200名(2020年4月現在)

事業内容:ICTサービス:コンサルティング、システム構築、サポート

    CAE分野:コンサルティング、ソフトウェア開発・導入、サポート

株主:株式会社NTTデータ(50%) 株式会社日本総合研究所(50%)

グループ会社:株式会社理研数理(株主:JSOL50%、理化学研究所25%、理研鼎業25%)

【株式会社JSOL公式サイトはこちら】

(提供 株式会社JSOL)

閉じる