出遅れた「山梨のSDGs」、取り組み広がるものの模索中

2021.8.25 06:03

 山梨県内の自治体や経済団体、企業などが、国連が提唱する持続可能な開発目標「SDGs」推進に向けた取り組みを急加速させている。民間調査でも、昨年まではSDGs取り組みで大きく出遅れていた山梨県内企業だが、今年は全国平均に近づくまで、積極的な企業が大幅に増加した。ただ現時点では宣言や連携協定の締結までで、具体化をどう進めるかは暗中模索の状況だ。

 経済3団体が連携

 甲府商工会議所、山梨県経営者協会、山梨経済同友会の県内の主要経済3団体はこのほど、SDGs推進の協定を結んだ。それぞれの会員企業のSDGs普及啓蒙活動や取り組みを顕在化させるように「見える化」を支援する。

 実は、この3団体は、新春の新年賀詞交換会などを共同で開催することはあるが、具体的な施策で連携するのは初めてだ。それだけに、SDGsが経済界にとって極めて重要なテーマであることを示している。

 自治体、企業、スポーツ

 都留市と、同市内に8つの駅を持つ富士急行は6月、SDGs推進の連携協定を結んだ。富士急は、2030年までに、環境目標を「負荷ネットゼロ&貢献」とし、富士山エリアを「リゾートシティ」として持続可能な地域社会を実現することをビジョンに掲げる。都留市の堀内富久市長は「第6次長期総合計画の方向性は、スケールは違うが方向性はSDGsと一致」するとして、推進を図る考えだ。そこで、富士急行線を活用した観光や産業の活性化、教育プログラムなどでSDGsの普及促進を図る。

 市川三郷町では、町職員を対象にしたSDGsの勉強会を開始した。8月中をめどに、約150人の正規職員全員が受講する計画だ。甲州市では、市民教養講座でSDGsの入門編を実施するなど、自治体レベルでの取り組みも始まっている。

 山梨県全域をホームタウンとする、サッカーJリーグの「ヴァンフォーレ甲府」もSDGs宣言を4月に実施した。これまでのサポーターや地域との絆、地域貢献や社会貢献を進化させ、SDGsを戦略基軸として、新たなスポーツクラブのあり方を目指す方針だ。スポーツとSDGsを組み合わせ持続性を図る。環境、健康、教育、国際交流の4つを重点テーマに設定している。

 「テンプレート必要」

 こういったSDGs宣言などが拡大していることは、帝国データバンク甲府支店の調査でも明確になっている。今年6月に県内237社を対象にした調査で、SDGsに積極的な企業は38・7%。全国平均の39・7%からは1ポイント低いが、昨年の21・8%からは大きく上昇したほか、昨年は全国平均よりも約3ポイント低かった中で、かなり追いついた状況だ。

 だが、SDGsに取り組んでいない企業は依然46・2%、言葉も知らない企業が5・7%と合わせると半数以上が取り組んでいないという事実もある。さらにSDGsの「意味と重要性を理解して、取り組んでいる」企業は12・3%にとどまり、宣言や意向を示しても具体的な取り組みはまだ明確になっていない実態も浮かび上がる。

 帝国データバンクの広瀬典男甲府支店長はこれらの状況に対し「中小企業が多い山梨では、SDGsをどうやって進めていいのか知識がないのが実情」と指摘する。そのため、金融機関やコンサルタントによる指導が必要なほか「SDGs導入のテンプレートなどを用意する必要がある」と強調する。

 【SDGs】 国連が2015年9月の国連サミットで採択したSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称。17のゴールと169のターゲットを世界共通の目標と設定し、地球上の誰一人として、取り残さない平和で豊かな社会の実現を目指す。貧困や飢餓、福祉や教育、人権、環境、エネルギー、経済的不平等など、国際社会のさまざまな課題解決に向けて、国連加盟国の全てが行動することを求めている。

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