コロナ禍前の社会に戻る? テレワーク疲れで“オフィス回帰”の流れ加速

2021.7.28 17:00

 精神的にも、効率的にも、テレワークは限界に? 日本生産性本部が実施したアンケートでテレワーク疲れの実態が明らかになった。テレワーク実施率はコロナ禍が始まって以来、依然として2割程度で推移しているものの、テレワーカーの1週間あたりの出勤日数は増加。「オフィス回帰」が進んでいる傾向がうかがえ、日本生産性本部は「テレワーク疲れを注視する必要がある」と注意を促している。

 進むオフィス回帰

 調査結果によると、テレワークの実施率は20.4%と、2020年7月調査以来依然として約2割で推移しているが、テレワーカーの直近1週間(営業日ベース)の出勤日数を見ると、週当たり「0日」、つまり1週間を通して完全なテレワークを行った割合は11.6%とこれまでの調査で最も少ない結果になった。4月の18.5%と比較しても、統計的な有意差をもって減少傾向を示している。

 雇用者全体に占める「完全テレワーカー」の割合も減少傾向が続いており、今回調査で2.4%と初めて3%を下回った。昨年5月時点には10%を上回っていたことを踏まえると、オフィスへの回帰が進んでいるといえそうだ。

 テレワークの作業形態として大多数を占める「在宅勤務」については、「効率が上がった」「やや上がった」を合わせて50.2%と調査開始後初めて減少に転じ、4月調査の59.1%から8.9ポイント減った。在宅勤務の満足度も「満足している」「どちらかと言えば満足している」を合わせた割合は70.2%で、ピーク時の今年4月(75.7%)から減少した。

 テレワーカーに対してコロナ禍収束後もテレワークを行いたいかをたずねたところ、「そう思う」と回答した人は28.6%で、4月調査の31.8%から微減。「どちらかといえばそう思う」は45.5%にわずかに増加した。両者を合わせたテレワークを望む割合は74.1%となり、4月調査の76.8%からやや減少した。

 コロナ以前の社会に戻る?

 コロナ禍収束後の「働き方の変化」が起こる可能性については、「起こり得る」「どちらかといえば起こり得る」の両者を合わせた割合が、「テレワークの普及」37.9%、「決済方法のデジタル化」47.4%、「Web会議の普及」53.1%、「対面営業の縮小」41.3%と、いずれも調査開始以来最低の結果に。一方「生活様式の変化」についても、「都会から地方への移住」は28.9%、「ワーケーションの普及」27.6%とこちらも同様に過去最低の結果となった。

 現在の日本の景況感については、「やや悪い」「悪い」の合計が69.4%と初めて7割を下回り、昨年7月時点の78.2%と比較して大きく減少した。

 今後の景気については、楽観的な見通し(「良くなる」「やや良くなる」の合計)は17.3%と過去最多になった一方、悲観的な見通し(「やや悪くなる」「悪くなる」の合計)は42.7%と過去最少となった。

 日本生産性本部は「働く人の意識には、今後の経済見通し、勤め先の業績不安の軽減等の点で、明るい兆しが見えていることが分かったが、一方でコロナ禍収束後の社会・経済の変化に対して懐疑的な見方が強まっている」と分析。雇用者の意識は「ポストコロナ」の新しい社会の到来の可能性に否定的で、むしろ「コロナ以前の社会に戻るのではないかという考えが強まっている」との見方を示す。

 テレワークについても実施率は2割前後と1年前から変化が無く、むしろ週当たりの出勤日数が増加するなどオフィス回帰を望む傾向が強まっていることから、効率や満足感の低下から「テレワーク疲れ」が生じている可能性があることも示唆している。

 調査は新型コロナウイルスが働く人の意識に及ぼす影響を継続的に調べることを目的としたもので、昨年5月から四半期毎にアンケートを実施している。6回目となる今回は、1都3県を中心に新規感染者数が増加傾向にあった7月5・6日の2日間、20歳以上の企業・団体の雇用者1,100人を対象にインターネットを通じて行った。

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SankeiBiz編集部

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