日鉄、トヨタなど提訴 モーター鋼板特許めぐり

2021.10.15 08:32

 日本製鉄は14日、電気自動車(EV)のモーターなどに使う高級鋼板「電磁鋼板」に関する同社の特許権を侵害したとして、トヨタ自動車と中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄を同日付で東京地裁に提訴したと発表した。トヨタと宝山のそれぞれに約200億円の損害賠償を求めている。特許侵害の疑いがある電磁鋼板を使ったトヨタの電動車について、製造と販売を差し止める仮処分も申請した。

 日鉄はトヨタに多くの鋼材を納めている。日鉄が顧客でもある自動車メーカーを特許侵害で訴えるのは初で、取引関係の深い業界トップ企業同士が訴訟に陥るのは極めて異例だ。

 日鉄は、トヨタが侵害対象の電磁鋼板を使ったモーターを電動車に搭載したことも特許侵害に当たると主張。「(宝山とトヨタの)それぞれと協議してきたが問題解決に至らなかった」としている。

 これに対しトヨタは「材料メーカー同士で協議すべき事案で、(完成車メーカーのトヨタが)訴えられたことは大変遺憾」と反論。特許侵害が疑われる電磁鋼板については、「取引締結前に侵害がないことを製造元に確認の上、契約している」と説明している。

 電磁鋼板をめぐっては、日鉄(当時は新日鉄住金)が平成24年、技術を不正取得されたとして韓国鉄鋼大手ポスコを提訴。3年後にポスコが300億円の和解金を支払うことなどで合意している。日鉄はポスコとの訴訟と今回の件は「(提訴の根拠となる)法律や事実関係がかなり異なる」と説明している。

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