「ウナギ少女」炎上の志布志市がまた騒動…でも謝罪文が悪くなかった

 
鹿児島県志布志市のふるさと納税特設サイト

ニッポンの謝罪道】 鹿児島県志布志市が、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の閲覧数を増やそうとすべく、職員にサイトの閲覧を呼びかけていたことが様々なメディアから報じられた。同市は2016年5~7月にかけて同サイト内のアクセス数1位を3か月連続で達成し「殿堂入り」をしたほどだった。職員を動員してアクセスするというのはいわば「組織票」のようなもので、注目度を高めるためにやり過ぎてしまったということだろう。

 ふるさとチョイスほどの巨大なサイトで職員のアクセスがどれだけランキングに影響を与えたかは分からないが、とにかく組織的にやることのセコさが報じられた形となった。同市のHPには今回の件についてお詫び文が掲載されており、ツッコミどころ満載なのだが、これが謝罪道的にはそんなに悪くないのである。

◆志布志市といえば…「ウナギ少女」PR動画で炎上

 その文章を紹介する前に志布志市といえば、2016年9月にスクール水着を着た少女がプールを泳ぎ、最後に「養って」と囁く動画が「セクハラだ」「変態」と炎上した件を覚えている方もいるかもしれない。スクール水着姿の少女を起用し、同市の返礼品の一つである「鰻」に見立てたのである。すぐに動画は削除したが、宮城県の観光PR動画で壇蜜を使った演出が無駄にエロ過ぎるとして炎上したのと同様のケースである。

◆「セコいことをして申し訳ない」となぜ謝れない?

 さて、以下が今回のお詫び文だ。

 〈平成29年11月8日の一部報道において、本市のふるさと納税に関する取組みが、寄付者の方々をはじめ志布志市にご縁を賜っております皆様方に大変なご心配とご迷惑をおかけしましたこと、慎んでお詫び申し上げます。〉

 --この「一部報道」って書き方なんなんですかね? 通常は「週刊文春」とか名指しすべきところを「そいつらの宣伝してやるか、ケッ!」とばかりに「一部週刊誌」とやるわけだが、今回は多くのメディアが報じているので「報道で」でいいじゃないか。

 あと、市の職員と家族とふるさと納税の返礼品の関係者以外には「大変なご心配」はかかっていない。迷惑については、「ランキングが高いから選ぼうかな!」と思った人とサイトのランキングの信ぴょう性を疑われかねない結果になった「ふるさとチョイス」にはかかっているかもしれない。だが、いずれにしても「ご心配とご迷惑」を一義的にお詫びするのではなく、「セコいことをしてしまい、申し訳ありません。お恥ずかしい限りです」と書いた方が明確に謝っている感が出る。

 なにせ去年の炎上騒動があり「目立ちたがり屋の勘違い自治体」といったイメージがすでについているわけで、そこが組織的なアクセス吊り上げ工作をやっていたという「またか!」的なところがあるわけだから。大体において「迷惑と心配」について謝るのはもはや古臭いのである。「迷惑と心配」というボヤっとしたものではなく、「セコいこと・みみっちいことをした」という明確な落ち度に謝ってはいかがか。

 今回の場合は「誤解を与えたのであれば申し訳ありません」を使っていないだけ若干の評価はできるところだが、正直これまで同市に寄付した人間からすれば「鰻をちゃんと送ってくれさえすればそれでいい」としか思えない。

◆またか! 歯切れの悪い「ご心配やご迷惑」

 お詫び文を読み進めると、志布志市がふるさと納税に関して、いかにコツコツ取り組んできたかという説明に続く。

 〈中でも、全国に在住する一人でも多くの方々に志布志市を認知し、理解していただくために、様々なポータルサイトでの情報発信には関係者一丸となって取り組んでおります。〉

 --これは市民に対する釈明だろう。この「頑張って仕事してます!」をアピールするのは悪くない。そして、報道された返礼品の「お気に入り」登録数ランキングが上位に入っていることについては、志布志市のこれまでのPR活動の成果だと主張。そしてこう続ける。

 〈こういったふるさと納税制度の重要性を市職員が認識するために、情報サイトを閲覧し、PV数を上げるように呼びかけていたというのは事実でございます。今後はこれまでの取組みをもう一度精査し、ご寄付いただいた方々をはじめ、全国の皆様にご心配やご迷惑をかけぬよう真摯に取り組んでまいりたいと考えております。〉

 事実を明確に認めるところはいいのだが、やはりまた「ご心配やご迷惑」が出てくるのが歯切れが悪い。今回の件の問題は市民からすれば「またやらかしたのか!」ということであり、市民ではない寄付者からすれば「セコい自治体にカネ払っちまったな」という気持ちになることだろう。だとすれば、「ご心配やご迷惑をかけぬよう」これから「真摯に取り組んで」とするよりもこう書けばよかった。

 「他の自治体に負けたくない--そういった気持ちが過度に出て実に恥ずかしいことをやってしまいました。これからは一般のユーザーの皆様の民主的なアクセスによりランキングが正確に反映されるようにします。志布志市の魅力的な返礼品の本当の実力で勝負する所存でありますので、情けない気持ちになってしまった方にお詫び申し上げます。作為的に作られたランキング、といったイメージもつけてしまい、生産者の皆様には心からお詫び申し上げます。今後とも素晴らしい品の数々を提供いただけますよう、ご協力のほどお願い申し上げます」

◆役所の「横並び体質」 最たるものが返礼品競争

 それにしても、こうした件が自治体広報で相次ぐのは「横並び体質」にある。自治体の広報を手伝う人物から聞いたのだが、とにかく役所は「先例主義」のため、他の自治体の成功例をなぞることを考えるそうだ。宮崎県小林市の「フランス人が九州弁で観光案内をする動画」や大分県別府市の「湯~園地」計画、佐賀県の『恋するフォーチュンクッキー』を職員が踊る、などもそうだ。

 何かメディアから注目を浴びるような企画が出てくると広告代理店を呼びつけて「ウオッホン! 我が市も『ああいうこと』やりたいんだよね!」と言うと代理店は「成功ケーススタディを集めてきて、それを○○市さんのUSP(独自のウリ・強み)を活用した形でカスタマイズされた動画企画をお持ちします!」なんてことを言い、「ウヒヒ、これで動画の受注GET!」と思うのである。こうした役所の横並び体質の最たるものが過熱するふるさと納税の返礼品であり、死屍累々となったゆるキャラの過剰供給なのである。

 とにかく今回の件は志布志市がソッコー認めたことと、やってることが妙に健気というか、社畜の鏡といった解釈もできるわけで、若干シンパシーを感じられた点が謝罪道的には「アリ」だったのだろう。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は隔週水曜日。