トウホク?外国人に低い知名度 「世界中探しても東北にしかない観光資源」被災地を目玉に

 
東日本大震災以来7年ぶりに行われた請戸漁港の出初め式で風にたなびく大漁旗。後方は東京電力福島第1原発=2日、福島県浪江町

 昨年、年間の訪日外国人旅行者の数が過去最多を更新した。確定値は集計中で、最終的には2800万人台半ばに上るとみられる。

 今年は3千万人突破が確実視される。東京五輪の開かれる2年後に4千万人台に乗せる政府目標に向けて上積みを重ねている。

 インバウンド(訪日旅行)というカタカナ語も定着した。その経済効果に国中が熱視線を送る。

 そんな中、東北が出遅れた。

 観光庁の宿泊旅行統計によると、平成28年に東北の宿泊施設に泊まった外国人は延べ64万8430人。地方ブロック別では四国に次いで2番目に少ない。

 東日本大震災の前年(22年)からの伸び率も28%にとどまる。150%増を記録した全国から水をあけられた。

 東北は各県とも震災の年に大きく減らした。徐々に持ち直し、ようやく震災前の水準に戻している。東京電力福島第1原発事故が影を落とす福島は微減の秋田を除けば47都道府県で唯一、震災前の実績を回復できていない。

 震災の影響は否定しない。だが、主因はそこではない。

 要は「東北は外国人に知られていない」のだ。決定的な知名度不足。日本通の人でも「トウホク? どこ?」なのである。

 普通の訪日客ならまずはゴールデンルートの東京、京都、大阪に行く。次に北海道と九州・沖縄。東北は3番手、4番手以下にすぎない。東北にも魅力はあり、それに惚(ほ)れ込む人もいるが、絶対数が少なく、大きなうねりにならない。

 わが身に置き換えると分かりやすい。北米旅行に行くとして、多くの人が真っ先にニューヨークやロサンゼルスを訪問先に挙げるだろう。地名を聞いてもピンとこない田舎の州を訪れたいと言う人はまれだろう。

 インバウンドの波に乗り遅れまいと、宮城県は今年度、専門部署を設け、誘客を本格させた。昨年出た「ミシュランガイド宮城版」を英訳したり、中国語の観光動画を流したりとPRに躍起になっている。

 しかし、これらは地元の魅力を満遍なく紹介する内容にとどまり、よその都道府県の宣伝と変わり映えしない。下位に甘んじている現状を打破し、上に押し上げる力に欠ける。「世界中探しても東北にしかない観光資源」を見つけ、集中的に情報発信すべきだ。

 世界中探しても東北にしかない観光資源。

 ある。

 被災地だ。

 あれだけの大災害に見舞われた地は世界広しといえどもそうない。

 被災地を観光地化することには異論もあろう。「被災者感情を逆なでする」と。行政も被災地ツアーを売りの一つにしているが、被災者に気遣い、前面に押し出せていない。

 今年も「3・11」を迎える。一般の人には「もう7年」でも、震災で身内を失った遺族にとっては「まだ7年」。心の傷は癒えていない。家族が命を落とした震災遺構の前で観光客が記念撮影に興じる光景を目にする遺族の心中は穏やかではない。

 時間をかけるべきだとは思う。心の痛みを和らげながら、少しずつ進める。

 拙速は禁物とはいえ、東北を海外から注目を集める観光地にするには、割り切って被災地を観光の目玉にして打って出るしかない。

 その方向性が的外れでないのは、長い年月を費やして悲劇を消化し、世界的な観光地に仲間入りしたヒロシマが示唆している。(東北特派員 伊藤寿行)