「弁護士法人として品位を失う行為…」執行部、新興勢力を“断罪” 世代間の対立鮮明に
昨年10月11日、法曹界に激震が走った。東京弁護士会が、弁護士法人のアディーレ法律事務所を業務停止2カ月、元代表の石丸幸人(45)を同3カ月とする懲戒処分を発表した。
インターネット上で、約1カ月ごとの期間限定で過払い金返還請求の着手金を無料・割引にするなどのキャンペーンを繰り返し、約4年10カ月にわたり広告を掲載していたことが問題視されたのだ。これに先立つ平成28年2月、消費者庁が景品表示法違反(有利誤認)にあたるとして措置命令を出している。東弁はこれを踏まえ、広告が「弁護士法人として品位を失うべき非行」と判断した。
東弁懲戒委員会の議決書は、多くの過払い金返還請求や債務整理を手がけるアディーレの手法をこう断罪している。《ベルトコンベヤー的な機械的作業で数をこなし利益を獲得することに重点が置かれる》
アディーレは大々的な広告宣伝で急成長した「新興勢力」だ。28年3月末時点での所属弁護士数は162人と国内6位の規模を誇り、ロースクール世代など若手が多く在籍。依頼者約9万人を抱えていた。だが処分後、すべての顧問契約と委任契約の解除を余儀なくされた。昨年12月11日、業務を再開したものの退社が相次ぎ、所属数は約20人減少。全86拠点のうち再開できない拠点もある。
存亡にかかわる処分には、東弁と新興勢力との確執もささやかれた。27、28年度の東弁副会長選に立候補し、異例の任意加入制導入を主張した赤瀬康明(39)も当時、アディーレに所属していた。アディーレは若手の「弁護士会離れ」を象徴する存在なのだ。
「萎縮効果狙ってる」
アディーレは景表法違反の事実自体を争っておらず、業務再開時にも「深く反省する」とコメントしている。ただ、問題は東弁側の処分の意図だ。一線を越えた行為を正当に“裁いた”のか、それとも、今回の行為に乗じて体制に反抗的な新興勢力に致命傷を負わせる底意があったのか。
アディーレと同じ新興勢力のベリーベスト法律事務所の代表、酒井将(40)は処分を「重すぎる」とし、悪質性の低さを理由に挙げた。「弁護士の品位という趣旨は分かるが、事務所を潰すようなインパクトのある処分を科す話ではない」。その上で、処分意図に関して「広告を出して規模を拡大する弁護士法人に対して萎縮効果を狙っていると感じる」と語る。幾度も「弁護士会の壁」を痛感してきたからだ。
ベリーベストは採用活動で、日本弁護士連合会(日弁連)が運営する「ひまわり求人求職ナビ」への求人情報の掲載が認められていない。「弁護士会への苦情件数が年10回以上」という不掲載基準に引っかかるためという。東京の3弁護士会が合同で開催する就職説明会にも参加できない。「依頼者が約2万人もいたら一定数の苦情が出るのは避けられない」と酒井。ダメージは大きく、「事務所を大きくできないようにする意図が透けて見える」と言う。
アディーレも同様で、ナビの不掲載や就職活動説明会への参加拒否をめぐって訴訟を起こし、1、2審敗訴を経て上告している。
収まらぬ世代間対立
早稲田大大学院准教授の石田京子(法曹倫理)は処分について「数にまかせて全国展開する行き過ぎた『事件あさり』とも言える手法自体に警鐘を鳴らし、一罰百戒の効果を狙ったのでは」と指摘する。一方、弁護士会の体質に対しても「硬直的で対応も遅い。利用者のことを考えれば新しいビジネスモデル自体は奨励すべきで、いかに悪質なサービスを未然に防ぐかが課題だ」と語る。
アディーレ側は「行為と処分の均衡を欠く」として審査請求を申し立てており、今後、日弁連が処分の当否を判断する。
「彼らは手弁当の事件や人権活動なんかやらない。金もうけだけ。弁護士自治も勉強していない」。かつて執行部にいた弁護士の言葉は新興勢力の負の側面を突くが、弁護士会の左傾化や体質は省みない。酒井は人権活動への参加を検討して弁護士会に歩み寄る姿勢を見せつつ、「顧客のニーズに応えた分かりやすいサービスを提供しているから依頼者が集まる。金もうけだけというのは偏見だ」と反論する。弁護士像をめぐる世代間対立は収まるだろうか。(敬称略)
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