「大学定員増」禁止で大学勢力が激変か 有名私大「MARCH」人気に陰りも
2月に入り、私立大学の入試シーズンが本格化するなか、その勢力図を激変させかねない事態だ。政府は東京23区内で大学定員増の原則10年間禁止を盛り込んだ法案の年度内成立を目指している。定員抑制に猛反対していた小池百合子都知事を押し切る形だが、実現すれば「MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)」と呼ばれる有名私大にも影響は避けられないと専門家は予測する。
2016年時の東京圏(1都3県)の転入超過数は11万7868人。このうち15~19歳が23%、20~24歳が58%を占めており、大学入学や大卒後の就職の際に転入する若者が多いとみられる。
東京圏のなかでも、大学の学部学生数は東京23区は05年ごろから増加の一途なのに対し、東京の23区以外や埼玉、千葉、神奈川の各県では横ばいと、23区への集中が際立っている。
政府は、若者の東京一極集中是正を図るという目的で、昨年6月に23区内で定員増を原則認めないとする基本方針が閣議決定されたことを受け、文部科学省は2018年度入学者の定員増を例外を除き認めないとの基準を告示。19年度も定員増を認めない方針だ。
さらに、10年間の定員増禁止や、地方大学の振興や雇用創出を図る交付金制度創設などを盛り込んだ法案を成立させる構えだ。
小池都知事はこうした動きに「学生の学ぶ場所を選ぶ自由を奪う」などとして一貫して反対してきたが、「10年間」という期限付きながら導入される可能性が出てきた。
「地方の大学を盛り上げる動きには大賛成だが、だからといって東京23区の大学定員を抑制していいということにはならない」と反発するのは、全国123の私大が加盟する日本私立大学連盟の担当者。
「期限を設けるといっても10年は長すぎる。グローバル化に伴う変化やAI(人工知能)の研究など、これからの時代は大学に求められるものも違ってくるはずだ。第三者機関などで必要だと判断されれば23区内の大学でも学部の増設や定員増が認められる例外措置を講じるよう政府には要望している」と強調する。
地方の大学はどうみるのか。国立の愛媛大の赤間道夫教授(社会連携推進機構)は「いまの時点ではまだ分からない」としたうえで、「地方から東京の私立大学へ進学すると、保護者は学費や仕送りを合わせて年間200万円はかかるといわれる。10年間、23区の大学の定員増が禁止されれば、地元の、特に授業料の安い国立大志向の学生は増えるかもしれない」との見解を示す。
愛媛大は地域で就職する人材の育成に力を入れており、16年度の卒業生の県内就職率は、総合大学では異例の40%に達しているという。法案が通れば「最終的には50%を目指している」(赤間氏)という目標に一歩近づくかもしれない。
都心部に拠点を置く大学にとって、定員抑制は死活問題だ。夕刊フジで「親も知らない今どき入試」を連載する大学通信の安田賢治氏は「東京国際や東洋、専修など、すでに土地を購入し、理事会で学部を作ることが決定している大学を除けば23区内で学部の新設は許されない状況だ」と指摘する。
少子化が進むなか、受験生を確保するには時代に即した学部を新設することが近道だ。ただ、既存の学部を廃止したり定員を減らしたりすることは容易ではなく、定員増が抑制されたままでは身動きが取りづらいという。
安田氏は「今後は23区外にある大学が、新学部を作り、学生も興味を示すのではないか」と予測する。早稲田や慶応など最上位校の人気は引き続き盤石と予想される一方、法学部が都心回帰する予定の中央大を含むMARCHクラスについては「今後、停滞が予想される」とみる。
国会審議はどう進むのか。受験生を持つ親もひとごとではいられない。
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