冬季五輪、なぜ平昌が主会場に? 政治の思惑色濃く 雪質の悪さ致命傷

 

 4年に1度の冬の祭典、第23回冬季オリンピック平昌大会は9日、平昌五輪スタジアムで開会式を行い、17日間の熱戦が始まった。冬季史上最多92カ国・地域から2925選手が参加、前回ソチ大会よりも4つ多い102種目でメダルを競う。日本は153選手を送り、ソチ大会の8個を上回るメダル獲得を目標に掲げる。

 北の意のままに

 平昌大会は、政治の思惑が色濃く影を落とす。国際社会の出方を眺め、もったいつけた北朝鮮が参加を表明したのは今年初頭である。前のめりの韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権を翻弄、南北合同行進の実現、女子アイスホッケー合同チーム結成に女子芸術団や応援団の派遣など、意のままに操る北の強さが際立つ。

 白地に青く朝鮮半島を描いた統一旗を掲げた合同行進は2006年冬季のトリノ大会以来。ただ開会式前日、朝鮮人民軍創建70周年を記念する軍事パレードを強行した北朝鮮である。一気に雪解けに進むとは考えられない。

 平均標高700メートル、韓国北東部・江原道の平昌は山のまち。氷点下、仮設の開会式会場は屋根のない吹きっさらし、強い風をさえぎるものもなく、参加者への影響を心配した。

 なぜ、ここ平昌が主会場になったのだろうか。

 「オリンピック開催を機会にここをスキーリゾート地として売り出したいんですね」

 昨年10月に亡くなった元国際オリンピック委員会(IOC)副会長の金雲龍(キム・ウンヨン)さんに生前、話を聞いた。金さんは「開発が遅れた江原道の活性化」とスポーツ、経済界の思惑を語った。

 この国の冬季スポーツといえばスケートである。ショートトラックは過去の大会で圧倒的な強さを誇り、フィギュアスケートは10年バンクーバー大会金メダリストの金妍(キム・ヨナ)に象徴される。そして今大会、スピードスケートには日本の小平奈緒のライバル李相花(イ・サンファ)がいる。

 スキーやスノーボードなど雪の競技は話題にも事欠く。スキー人口は400万人にも満たない。江原道に多いスキー場は、韓流ドラマ「冬のソナタ」の舞台、龍平スキーリゾートが代表格か。質と量、規模とも日本にはとても及ばない。

 「名前が知られることで、日本や中国からもスキー客を呼べると思っている。しかし、開催することの効果は、そんなに簡単には表れない」。金さんはそう言って、首をかしげた。

 雪質の悪さは致命傷

 平昌大会の財政規模は13兆ウォン(約1兆3000億円)。ソチ大会の5兆円とは比較にならないが、バンクーバー大会の約6.5倍だ。うち11兆ウォンが高速鉄道建設などインフラ整備費である。

 高速鉄道は仁川国際空港、ソウルから約1時間30分で会場と結ぶ。IOC本部や関係者、選手たちが宿泊するホテル群は欧米のスキーリゾートをほうふつさせる。ここが雪上競技拠点となればスポーツ界に恩恵をもたらし、リゾート客で埋まれば経済界の思惑がかなう。

 しかし、平均気温はマイナス10度。最北のオリンピック、1994年リレハンメル大会よりもさらに寒い環境ばかりが喧伝(けんでん)されては逆効果である。

 加えてこの地は雪が少ない。今大会も雪不足を補うため、人工降雪機をフル稼働する。雪質の悪さはスノーリゾートとしては致命傷といってもいい。

 「スキーなら日本に行った方がいいんじゃないか」。昨年、当地を駆け足で回ったとき、タクシーの運転手がポツンと言った。地元の人が暮らす地域とホテル群とは隔たりが大きい。

 平昌から軍事境界線まで約80キロ。氷上競技を行う江陵はかつて南北衝突があった土地である。海岸線には今も鉄条網が残る。さまざまな思惑が渦巻き、冬の祭典の幕が開いた。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)