相続税逃れに「一般社団法人」設立? 不動産の付け替えが半永久的に…政府も規制案を提出
平成20年の公益法人制度改革で設立が容易になった一般社団法人を“隠れ蓑(みの)”に、相続税を節税する「課税逃れ」が広がっている疑いが強まっている。家族で運営を支配する一般社団法人に不動産などを所有させ、実質的に子供や孫に相続させる手法。法人の代表者が子孫に代わっても不動産の所有権は法人のままなので相続税はかからない。法人設立を節税目的とあからさまに表現するケースもあるといい、税の公平性を確保するため、政府は来年度の税制改正で事例によって課税などの対策を講じることを決めた。
半永久的にゼロ
「一般社団法人には相続税がかかりません」「役員は親族のみでOK」
これは、ある税理士法人のホームページに書かれた売り込みの文句だ。一般社団法人を使った節税策をストレートに持ちかけている。
一般社団法人は、同種企業などでつくる業界団体や、スポーツ・芸術などに関する互助団体が、団体全体の資産をきちんと管理するために設立されるのが一般的。だが最近は節税目的の一般社団法人が増えているとみられる。
昨年、大阪市内で設立されたある一般社団法人は、登記の法人目的欄に「(自分たち)夫婦の財産または遺産の管理及び活用、さらには夫婦が死去した後の紛争の回避をもって将来の相続人と親族たちの生活安定を目的として設立する」と記載した。近畿税理士会調査研究部の担当者は「節税目的を隠そうともしていない。ここまであからさまなのも珍しい」と指摘する。
同税理士会によると、実数は不明だが、一般社団法人を利用した課税逃れが広がっている恐れがあるという。家族で運営を支配する一般社団法人に不動産などを所有させる手法を繰り返せば半永久的に相続税がかからないことになるため、日本税理士会連合会の神津信一会長は昨年11月、政府税制調査会で「課税の公平上、問題となる事象」と問題提起した。
今春から適用へ
政府も危機感を持っており、今年2月、課税逃れを規制する内容を盛り込んだ税制改正の関連法案を国会に提出。同族役員が過半数を占める一般社団法人の場合、役員の死亡により法人が一部資産を相続したとみなして相続税を課税する-などとした。政府は今春からの適用を目指している。
新たな規制案について、一般社団法人の課税逃れ問題に詳しい中尾隼大(しゅんた)税理士(中国税理士会)は「節税する目的のみで役員の半数以上を第三者とするのは現実的に難しく、厳格な姿勢がうかがえる」と評価。ただ、「形式的には仲の良い複数の家族が集まり共同で法人を設立するなどの抜け道も考えられる」と指摘する。
近畿税理士会調査研究部の桜井繁樹税理士も「役員数が2分の1を超える場合というのは甘いのではないか。さらに厳しくしても、きちんと活動している団体に弊害はない。規制を強化すべきだ」と話している。
一般社団法人 公益法人制度改革で平成20年に関連法が施行され、従来の社団法人に代わり、公益社団法人とともに設けられた法人。それまでの社団法人は公益性が求められたが、その有無にかかわらず設立できるようになった。NPO法人が特定の非営利活動を目的として行政庁の認証を受けることが必要なのに対し、行政庁の許可なく登記のみで設立できるほか、事業内容に制限がない。株式会社と同じように収益事業も行える。ただし、株式会社の株式に相当する「持ち分」という概念がなく、相続税がかからない仕組みとなっている。
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