森友問題の佐川氏が注目されたのは「身長」だけ? 本筋と違うところが悪目立ちする謝罪

 
辞任の意向を麻生太郎財務相に伝えに向かう佐川宣寿国税庁長官(当時)=9日、東京都千代田区の財務省(春名中撮影)

【ニッポンの謝罪道】 森友学園問題にまつわる証人喚問を終えた元国税庁長官(元財務省理財局長)・佐川宣寿氏の名前をネット検索すると、奇妙な予測ワードが登場する。それは「身長」である。そして、いわゆる「トレンドブログ」と呼ばれる類のサイトには佐川氏の身長にまつわる情報が書き込まれる。

 なーにが「トレンド」だと言いたくなるようなパクリだらけのクソサイト揃いなのだが、これらのサイトは何らかの事件が報じられた瞬間に片っ端から情報を集め、写真を無断転載し、「○○かもしれませんね」「今のところ、情報ははっきりしていません」「新しい情報が入り次第また報告します」などと書く。この手のクソ情報が検索で上位にくるものだから、煩わしいったらありゃしない。グーグルさん、なんとかしてくれ~。

 「佐川宣寿 身長」で検索した場合、上位にくるクソサイトの記事タイトルを紹介しよう。

〈佐川宣寿の学歴や略歴・身長は?自宅(家族)やパワハラも判明!〉

〈佐川宣寿前長官の身長や学歴は?結婚や子供の噂!自宅やかつら疑惑も〉

〈佐川宣寿は身長が低い?髪がカツラ疑惑や自宅の住所がバレてヤバい!〉

 より下世話で過激な内容を盛り込みまくったタイトルだが、「学歴」「身長」「パワハラ」「結婚」「かつら」「自宅」「住所」「家族」といった好奇心を煽るようなキーワードをタイトルにちりばめ、アクセス稼ぎを目論んでいる。プライバシーに余計に入り込むことまでしていて実にけしからん。佐川氏本人からも、中身をパクられたメディアも一斉にこいつらを訴える方向に持っていってほしいものだが、本稿では「謝罪会見をしたにもかかわらず、肝心の謝罪内容があまり頭に残らず、余計な印象だけが残ってしまった謝罪」について振り返る。

◆謝罪会見は地味に、淡々と、とにかく真摯に

 3月9日、財務省近畿財務局の職員が自殺したことが報じられた夜、佐川氏は大勢の報道陣にもみくちゃにされながら財務省の廊下を歩き、謝罪も含めた辞任会見に臨んだ。歩いている時は、かつてオウム真理教事件で麻原彰晃を弁護した横山昭二弁護士がもみくちゃになって「バカモーン!」「やめてぇ~」と叫んでいた様子を一瞬思い出した。そして会見が開始。その瞬間に「えっ?」と思ったのだ。

 何しろ佐川氏の身長が小さいのである。隣に立つ男性記者がかなりの高身長ということもあるのだが、大量のマイクを手に握る華奢な女性と同じぐらいの身長しかなかった。

 この頃、ツイッターでは佐川氏に関して「小さい」「身長が低い」といった書き込みが一斉にされた。多くの人が「こんなに小さかったのか……」などと思ったことは想像に難くない。過去の国会答弁の際は立っている時に誰かと並ぶシーンというのは見られないため、その身長は分からなかったが、こうして大勢に囲まれると途端に身長が際立ってしまうのである。

 思えば人々の記憶に残る謝罪会見といえば、本質とは関係のないところが気になって仕方がないことがあり、キチンと謝罪をしたとのイメージが薄れてしまうことがある。ネットにはそのことばかりが書かれることとなり、その時の様子がパブリックイメージとして定着していく。そう考えると、謝罪会見は地味に、淡々と、とにかく真摯に謝る、ということだけをするに限る。もちろん佐川氏の「身長」は本人が意図したことではなく気の毒な面もあるが、変えられる部分は変えていい。

◆「号泣社長」と「号泣県議」でついた差

 過去の謝罪をいくつか振り返ってみよう。

《アカデミー賞級土下座社長》

 2011年、「焼肉酒家えびす」のユッケを食べた客5人が死亡し、181人が食中毒被害を受けた。同店を運営するフーズ・フォーラスの勘坂康弘社長(当時)は、一旦は日本では加熱用の肉を殺菌のうえ店の責任で調理するのが慣例、と強弁したが4人目が死亡した後に行った会見では突然土下座し甲高い声で「すいませーん! 本当に申し訳ございませんでしたー!」と叫んだ。だが、これが「わざとらしい」「演技がかってる」と散々な評判になった。

《仏頂面お辞儀なし社長》

 2014年、期限切れ鶏肉を使用した日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長が謝罪会見を開いたものの、太い黒縁の四角いメガネをかけ、バキッと前を見据え「私達は(業者に)騙された」と同社は被害者だと主張し、日本流の深々としたお辞儀をしなかった。とにかくキリッとし過ぎていて謝罪に見えなかったのだ。これが酷評だったため、その後の会見で同氏は笑顔を時折見せたり、メガネのフレームを細くして柔和な印象を見せ髪の毛も後ろで結びお辞儀をし、高評価を得た。

《号泣社長》

 1997年、山一証券が破たんしたが、当時の社長・野澤正平氏が「社員は悪くありません!」と号泣しながら発言。野澤氏の社長就任前の段階から経営は悪化しており、いわば同氏は「尻拭い」をさせられた形だったが、この号泣は意外にも世間の同情を買う結果となったうえに、野澤氏はその後も当時を振り返る取材などで誠実な人柄を見せることとなった。

《号泣県議》

 2014年、当時兵庫県議だった野々村竜太郎氏は政務活動費の不正使用に関する会見で突然号泣。「日本をガエダィ(変えたい)!」などの他、言葉にならないうめき声をあげるなどし、一躍その年のネット界隈におけるスターに君臨した。号泣のインパクトが強過ぎ、一体いくら政務活動費を不正に使っていたのか、などが印象に残らない結果に。

◆何度も呆れられた「はれのひ」の社長

《公開処刑謝罪》

 2016年、SMAPが解散することが報じられ、当時のメンバー5人は『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)に出演し、黒いスーツ・ネクタイ姿で登場。ファンへの感謝をするとともに、これからの決意などを語り、世間を騒がせたことを謝罪をした。だが、草なぎ剛が「今回ジャニーさんに謝る機会を木村君が作ってくれて、いま僕らはここに立てています」と事務所社長のジャニー喜多川氏に感謝するとともに、事務所に残る木村も立てる発言をした。この件により「公開処刑」などと評され、「事務所・木村拓哉VSその他のメンバー・マネージャー」という構図が鮮明になってしまった。

《薄ら笑い謝罪》

 2017年、不倫が報じられた俳優・渡辺謙は、妙にニヤニヤしながら会見をしたため、バッシングが発生。不倫と同列で扱うのはおかしいが、同年初頭に現役女子高生との淫行騒動が報じられた(チャラいイメージがある)お笑い芸人、狩野英孝でさえ涙を流して謝罪、芸能活動を謹慎するに至っただけに渡辺のこの態度にはバッシングも出た。なお、狩野は淫行騒動の前には「6股疑惑」が報じられていた。

《無能すぎて呆れられ会見》

 着物着付けや販売、レンタルを行う「はれのひ」が2018年の成人式で新成人を前にとんずら。当日に店舗を閉鎖した。一部営業し、必死にサービスを提供した店もあったが社長の篠崎洋一郎氏は雲隠れ。成人式の18日後にようやく会見をした。だが、用意されたペーパーを棒読みするだけで、「逃げていたのではありませんか?」という質問に「逃げていません」と言う始末。おい、逃げてただろ。

 おどおどし、社長としての威厳が感じられない会見と「いいパパ」役が多い俳優・大地康雄似のその姿から、記者にしてもポカーンと呆れ果ててしまうような会見になった。その後、篠崎氏は記者団を連れて2時間の「徘徊」をし、その間なぜか笑顔を見せる場面もあり、これまた呆れられた。

◆史上最強の謝罪会見は真似するな?

 上記の謝罪はあまりにも「特徴があり過ぎた」謝罪であり、長期に渡って人々の記憶に残り続けてしまう。その一方、DeNAキュレーションメディア問題や元衆議院議員の宮崎謙介氏不倫問題における謝罪会見は淡々としたものかつ、ブレることなく謝罪を続けただけに「謝罪をしたイメージ」だけが残り、その他のどうでもいい(ただし印象的)なサイドストーリーが記憶に残らない。こうした謝罪を心掛けるべきだ。

 ただし、史上最強の謝罪会見といえば、1990年、ハワイのホノルル空港でコカイン1.75グラムと大麻9.75グラムを持っていたところ逮捕された俳優・勝新太郎だろう。これらはパンツに入っていたのだが、「入れちゃったものだからしょうがないじゃん」と言った挙句「なんで入れたかって? ズボンに入れたら落っこちちゃうもんね。今後、こういうことが起きた時には、パンツはもうはかないほうがいいんだね」と言い切った。

 まったく関係のない余計なことだらけの会見ではあったものの、勝新ほどのキャラと実績があれば、これが許されてしまうという稀有な例である。凡人は決して真似をしてはいけない。DeNAや宮崎氏を参考にすべきである。

【プロフィル】中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

ネットニュース編集者
PRプランナー
1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』『バカざんまい』など多数。

【ニッポンの謝罪道】はネットニュース編集者の中川淳一郎さんが、話題を呼んだ謝罪会見や企業の謝罪文などを「日本の謝罪道」に基づき評論するコラムです。更新は原則第4水曜日。

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