【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(8)工法採用の背景に「想定津波高34メートル」の切迫感
東日本大震災を受け、国土交通省が2年後の平成25年にまとめた「防波堤の耐津波設計ガイドライン」では、コンクリートの堤体を地盤に載せる従来工法「フーチング工法」について、「耐津波設計の考え方を根底から見直させる」として、「粘り強い構造」への設計変更を求めた。
高知県内ではそれに先立つ24年、高知市春野町の国交省の直轄事業で、技研製作所が開発した「インプラント工法」(地中深く差し込んだ杭(くい)で壁をつくる工法)を採用。
ガイドラインが「粘り強い構造」として示した「液状化による堤防の沈下を防止し、津波の越流による堤防の破壊を防ぐ」構造を実現した。
■ ■
高知県の南海トラフ地震対策をみてみると、現時点で、海岸堤防の強化が計画されているのは、「地震による沿岸部の地盤沈下で長期浸水が予想される高知市と周辺、宿毛(すくも)市」である。
しかし、これらは高知県の海岸線の総延長713キロのうちのごく一部でしかない。また、県管理の海岸の堤防は総延長約200キロに及ぶが、「高さが不足しているのは7割」に達する。
堤防強化が進められる高知市とその周辺、宿毛市にしても、想定されている津波の高さは、マグニチュード(M)8クラスの「数十~百数十年間隔で発生」(国がレベル1津波と呼称)で10メートル程度だ。
内閣府が24年に公表した、東日本大震災級のM9クラスの津波(レベル2津波)は、高知県内は最大で34メートルにも達し、堤防だけで人命を守るのは困難だ。
このため、国や県などは津波から人命を守る戦略として、地震発生とともに避難を開始する避難計画の充実や、避難タワー・ビルの整備に取り組む。実際、高知県内での避難タワーの整備は100基に達し、全国でトップクラス。南海トラフ地震の想定津波高が34メートルの黒潮町は、世帯ごとの避難計画を作るなど先進的な取り組みで注目を浴びる。
■ ■
とはいえ、やはり、堤防強化は最優先課題だ。
高知県も、国交省も「南海トラフ地震の発生が懸念される状況では、まず現在の堤防を生かし、高知市など都市機能が集中する場所を守ることなど課題をひとつずつクリアしていくほかない」と、早急なハード整備の必要性を異口同音に語る。
国のガイドライン公表に先立つ高知でのインプラント工法採用の背景には、そうした切迫感があったといえる。
◇
首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男氏が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。
関連記事