【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(11)騒音に振動 杭打ちから「建設公害」排除

 
圧入原理のイメージ

 東日本大震災を機に、「国土防災企業」を前面に掲げるようになった技研製作所。大震災の津波で、従来の「フーチング工法」(地盤にコンクリートの堤体を載せる)で造られた堤防や防波堤が破壊されたことで、同社が開発した「インプラント工法」(地中深く杭(くい)を打ち込み粘り強い構造をもつ)が徐々に普及し始めた。

 インプラント工法は、地球(地中)が有する抵抗力を生かす「圧入原理」に基づく。杭を地中に「打ち込む」のではなく「押し込み」、杭と地盤が一体化することで、堤防の地盤の液状化を防止し、杭で造る「壁」が津波を食い止める。

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 圧入原理は、技研製作所社長の北村精男(あきお)が見いだした理論で、インプラント工法をはじめ同社が打ち出しているさまざまな工法の根本となっている。その原理を基に、同社の発展を支えているのが、昭和50年に完成した杭打ち機「サイレントパイラー」である。

 圧入原理を生かした杭打ちの最大の特長は、振動と騒音という建設公害を排除した点。仕組みはこうだ。

 あらかじめ地中に打ち込まれた杭数本を、サイレントパイラーのクランプ部で掴(つか)み、引き抜こうとする際に生まれる地中の抵抗力を利用して、次の新たな杭を押し込む。

 砂浜で地中に埋まった杭を人が引き抜こうとする場面をイメージすると分かりやすい。手で杭を抜こうとすると、杭が突き刺さった地面の抵抗力のため、体に負荷がかかり、足下から砂の中に沈む。この沈む足が打ち込む杭にあたる。

 サイレントパイラーに置き換えると、杭打ちに上から衝撃を加える必要がないため、振動も騒音も起きないというわけだ。

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 同社によると、この杭打ち機の利点はほかにもある。引き抜き抵抗力が力の源泉であるため、機械を大型化する必要がない。100トンの力で杭を地中に押し込むための機械の重量は6トンにも満たないという。

 さらに、サイレントパイラーは打った杭の上を自走しながら、次々と杭を打ちこんでいける仕組みのため、工事を進めるために確保しなければならないスペースは、機械の横幅分で十分だ。

 北村は「圧入原理の可能性を常に追究してきた。自動化や遠隔操作がさらに進めば、工事の安全性・生産性も高まる。建設工事における工法革命を目指す」という。

=敬称略

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男氏が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。