【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(14)裂けたH鋼にひらめき 

 
公害処理を掲げ、最新のバキュームダンパーで泥の浚渫を請け負っていた

 技研製作所が無振動・無騒音の杭(くい)打ち機「サイレントパイラー」を開発する以前、振動と騒音で文字通り「公害発生機」とみられていた杭打ち機。だが、昭和30~40年代の高度経済成長期の建設現場では工事の主役だった。

 技研製作所の前身で、建設工事などを請け負った「高知技研コンサルタント」も例外ではなかった。溝や池の泥をさらう浚(しゅん)渫(せつ)事業も手がけ、会社の看板に「公害対処事業」を掲げた同社だが、実態は、「公害対処を看板にしていながら、杭打ち機を使った工事が稼ぎ頭だった」(社長の北村精男(あきお))。

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 無公害の杭打ち機を探し回ったが見つからず、現場での住民とのトラブルに頭を抱えた末に、北村は「無謀にも自分で作ってみようと思い立った」。昭和48年のことだった。

 脳裏には、ある記憶が浮かんでいた。

 会社設立(42年)前、高知市内のホテルの建設現場を通りかかったときのことだ。地下工事が終了したばかりの現場で、作業員らが土留め用に地中に差し込まれたH鋼(杭)を引き抜こうとしていた。大きな柱を建てて滑車を組み込み、穴をあけたH鋼にピンを通し、ウインチで引っ張り上げる作業だった。

 ところが、H鋼はビクともしない。それどころか、力が加わった末に、H鋼は穴の上方に向かって裂けてしまったのだ。

 地中に打った鋼矢板(土砂などの崩れを防ぐ杭)を引き抜く際、鋼矢板に土がまとわりつき引き抜きにくくなる現象は、北村にも覚えがあった。しかし、ホテルの建設現場で、北村が目撃した光景はひときわ強烈だった。

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 この光景を思い浮かべた北村には、ひらめくものがあった。

 「鋼矢板にまとわりついた地球(地中)のもつ力」を、杭を地中に押し込む力に変換できれば、杭に対して上から打撃を与える従来の杭打ち機とは異なり、振動も騒音も撒(ま)き散らすことはなくなるのではないか。

 この理論は、のちに「圧入原理」と呼ばれるようになり、原理を生かした機械が杭打ち機「サイレントパイラー」として、具現化されることになった。

=敬称略

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男氏が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。