【地球を掴め国土を守れ】技研製作所の51年(28)「売り上げの7割は海外」目標 

 
ミャンマーの山岳地帯の道路復旧工事で活躍するサイレントパイラー

 技研製作所は創業50年を迎えた平成29年、東証1部上場企業となった。

 高知の製造業では初めての1部上場だが、社長の北村精男(あきお)は「日本企業の代表として、世界戦略上に必要な資格を得た。温暖化など気候変動により、世界各地でサイレントパイラーによる工法の需要はある。海外市場での売上比率をグループ全体の7割にする」と意気込む。

■   ■

 1部上場直後の昨年11月には、オーストラリア・シドニーの鋼材商社「Jスチール社」を買収し、同社のアンソニー・バートラムス社長を専務に迎えた。同社はオーストラリア、ニュージーランド、南太平洋地域で基礎工事も手がけていることから、「技研の海外法人も含め、アフリカ以外はカバーできる体制となった」(北村)。

 欧米市場には昭和58年から進出しており、北村は「欧米は長い間培われてきた建設業界の因習がぬけきらず、サイレントパイラーの技術的な優位性をもってしても、文化や既得権益の壁を打ち破るのは容易ではないが、大きな需要は潜在している」と語る。

 今、北村の視野にある成長市場はアジアだ。

 過去2年間で、バングラデシュやミャンマーといった水害常襲地帯の国の災害復旧・対策のためのODA(政府開発援助)事業での受注を相次いで受けた。

 バングラデシュでは、災害対策のため、幹線道路の橋脚改修と増設工事の基礎工事をサイレントパイラーで行っている。

 ミャンマーでは、3年前の土砂災害で被災した山岳地帯の道路復旧工事を行った。今後も、同国の技術者に技術移転を行い、全土のインフラ整備でサイレントパイラーが使用されることとなった。

 両国の工事ではいずれも、仮設工事のスペースを必要としないサイレントパイラーによる工法の特徴が発揮された。

■   ■

 今後、アジアにおけるODA事業の増加が見込まれることから、技研製作所は今年、ODA事業部を新たに設置した。

 また、国際圧入学会によるセミナーがアジア各地で行われており、9月には、高知工科大学で第1回の「圧入工学に関する国際会議」が開催される。

 北村は近い将来の会社の姿をこう語る。「現在は純然たる日本人の企業だが、これからはアジアや欧米の人たちが社員として高知から世界に新工法を発信できるようにする」

=敬称略

 首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。